专利摘要:
本発明は、一般には、異種置換遺伝子配列を宿主胚性幹細胞に導入して内在性宿主遺伝子標的配列と置換するための方法に関する。詳細には、本発明は、先ず、内在性宿主遺伝子標的配列を欠失させ、次に、2種の近くに配置された部位特異的リコンビナーゼ標的(RT)部位を用いて異種置換遺伝子配列を宿主染色体に挿入することによって、大きいDNA断片を胚性幹細胞に効率良く挿入するための方法に関する。
公开号:JP2011515098A
申请号:JP2011501288
申请日:2009-03-25
公开日:2011-05-19
发明作者:ザイブラー,ヨスト;シーア,ニコ
申请人:アイティーアイ・スコットランド・リミテッド;
IPC主号:C12N15-09
专利说明:

[0001] 発明の分野
本発明は、一般に、異種置換遺伝子配列を宿主胚性幹細胞に導入して内在性宿主遺伝子標的配列と置換するための方法に関する。より詳細には、本発明は、先ず、内在性宿主遺伝子標的配列を欠失させ、次に、2種の近くに配置された部位特異的リコンビナーゼ標的(RT)部位を用いて異種置換遺伝子配列を宿主染色体に挿入することによって、大きいDNA断片を胚性幹細胞に効率良く挿入するための方法に関する。]
背景技術

[0002] 発明の背景
長年に亘り、細胞内の内在性遺伝子配列を異種置換遺伝子配列で置換することが注目されている。特に、この技術はヒト化マウスモデルの作出に用いられている。マウスモデルはヒト疾患を調べるための非常に有益なツールであり、多くの疾患の進行の研究や、潜在的な治療法の試験、薬物候補の前臨床研究、毒物学の検討に広く用いられている。従来、トランスジェニックマウスは外因性DNAの前核注入によって作出されている。つい最近では、例えば、WO94/02602に記載のように、対象となる外因性遺伝子及び選択可能マーカーを含有するバクテリア人工染色体(BAC)又は酵母人工染色体(YAC)を含む細胞と胚性幹細胞を融合させてマウスを作出し、外因性DNAセグメントの胚細胞ゲノムへの組込みについて評価している。このような方法は、相同組換えプロセスによるBAC又はYACの胚性幹細胞ゲノムへの組込みに依存する。この方法による遺伝子組換えは、BACやYACの取扱いに関与する技術的要求や、大きなDNA構築物を用いる際のES細胞の低トランスフェクション率のため、時間が掛かり、非効率的で不正確である。]
[0003] US2007/0061900には、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン可変領域遺伝子座に関してヒト化するための方法が記載されている。この方法は、ヒト免疫グロブリン可変領域の一部に連続するように配置された部位特異的組換え部位を2種類のベクター(LTVECと称する)の各々に挿入することを伴う。その後、これらのLTVECを直線化し、相同組換えによってマウス細胞のゲノムに導入し、部位特異的組換え部位がマウス免疫グロブリン可変領域配列に隣接するようにし、また、部分ヒト免疫グロブリン可変領域配列が部位特異的組換え部位に隣接するようにする。部位特異的組換えを行うことによって、マウス免疫グロブリン可変領域配列が除去され、その内部に含まれる残存部位特異的組換え部位が2個の部分ヒト免疫グロブリン可変領域配列と連結する。得られたマウスは、ヒト可変領域とマウス定常領域を含有するハイブリッド抗体を産生するが、純粋なヒト抗体を産生させるにはその後に形質転換段階が必要である。しかし、このアプローチは、非常に大きい異種DNA配列を有するベクターを用いた相同組換えの頻度が低いため非効率的である。また、免疫グロブリン可変領域の分節性によって、不都合な作用を殆ど生じさせることなく、残存部位特異的組換え部位を核酸配列内に残すことができる。非分節遺伝子内に残存部位特異的組換え部位をコードする核酸配列が存在することによってその転写能力が低下し得る場合には、該遺伝子のヒト化に対してこの種の技術を用い得ることは示されていない。]
[0004] Wallaceら(Cell 128, 197-209 2007)は最近、リコンビナーゼ介在ゲノム置換(RMGR)(即ち、内在性遺伝子配列を異種置換物と交換するためのより一般に適用可能なシステム)として知られる方法について記載している。この方法では、部位特異的組換えも用いてマウス対立遺伝子をオルソロガス遺伝子のヒト対立遺伝子で置換する。相同組換えによって、2種の非相互作用部位特異的組換え部位(loxP及びlox511)を標的遺伝子に隣接するマウス染色体に挿入する。非相互作用部位特異的組換え部位の同一対をBACに挿入し、標的遺伝子のヒト対立遺伝子に隣接するようにする。マウス細胞にBACを導入した後、部位特異的リコンビナーゼを発現させることによって、BACとマウス染色体の適合性部位特異的組換え部位間(loxP/loxP及びlox511/lox511)で2種の部位特異的組換え反応が生じ、ヒト遺伝子配列とマウス配列の相互交換が生じる。]
[0005] しかし、マウス染色体上及びBAC内に存在する非相互作用部位特異的組換え部位間の距離が大きいため、この方法は大きいDNA断片の挿入には非効率的である。組換え時にマウス染色体内にマウス対立遺伝子が存在することや組換え交換の相互特性のため、この距離は不可避である。また、このようなクローンのより詳細な解析から、その一部はBACのDNA内で再編成し、その結果、正しく標的化されたクローンの頻度が更に低下することが分かる。これに加えて、Wallaceらは、正しく標的化されたクローンを選択するため、5’−3’成分由来の機能性ヒポキサンチン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt)ミニ遺伝子の再構成を用いている。従って、このアプローチはHPRT欠損(hprt-)胚性幹細胞株においてのみ可能である。]
発明が解決しようとする課題

[0006] このように、上述の非効率に関する問題を克服するであろう、細胞内の内在性遺伝子配列を異種置換遺伝子配列で置換するためのより効率的な方法は依然として必要である。]
[0007] また、本発明は、正しく標的化されたクローンを選択するためのより一般に適用可能な方法を提供することを意図する。このようなクローンを選択する一般的な改良方法を提供することによって、HPRT欠損(hprt-)胚性幹細胞株以外の細胞においても組換え交換を行うことが可能となるであろう。一般的な選択方法によって、このような手続きが如何なる胚性幹細胞においても実行可能となるであろう。]
課題を解決するための手段

[0008] 発明の概要
本発明によると、異種置換遺伝子配列を宿主細胞に導入して内在性宿主遺伝子標的配列と置換する方法であって、
a)一対の同一のI型部位特異的リコンビナーゼ標的(RT)部位を別々の相同組換え段階によって宿主染色体の同一対立遺伝子に組み込み、置換対象の内在性宿主遺伝子標的配列が各々の端で前記同一のI型RT部位に隣接するようにすることと、
ここにおいて、同一のI型RT部位の一方は該I型RT部位の近くに配置されるII型RT部位に隣接し、II型RT部位はI型RT部位とは違って異種特異的であって、I型RT部位とは相互作用できないようになっており、
b)内在性宿主遺伝子標的配列が除去されるように前記一対のI型部位特異的組換え部位間で組換えを行って、残存I型RT部位を染色体内の除去位置に残すことと、
c)異種置換遺伝子配列を宿主染色体に接触させて異種置換遺伝子配列が一端でI型RT部位に隣接すると共に、他端でII型RT部位に隣接するようにし、適切な条件下、異種置換遺伝子配列に隣接し、宿主染色体内に配置された対応するI型及びII型部位特異的組換え部位間で組換えを行うことによって異種置換遺伝子配列の宿主染色体への標的部位特異的リコンビナーゼ介在挿入を行い、宿主標的遺伝子が先に占めていた宿主染色体内の位置において異種遺伝子配列が導入されるようにすること
とを含む方法が提供される。]
[0009] 本発明のメカニズムの概要を簡単に図1に示す。即ち、2種の別個の従来の相同組換え反応によって、宿主細胞の内在性宿主細胞染色体に2個のI型RT部位を組込む。相同組換えは本技術分野ではよく知られた現象であるが、理解を容易とするため、相同組換えのメカニズムの概略を図2に示す。2種の組換え反応は、内在性宿主細胞染色体とI型RT部位を含む置換核酸配列との間の短い相同領域によって促進される。これらの相同領域によって鎖侵入とその後の塩基対形成が促進され、鎖伸長によって各組換え部位が宿主細胞染色体に挿入される。] 図1 図2
[0010] 内在性宿主遺伝子標的配列の両端に挿入されるI型RT部位に加えて、内在性宿主遺伝子標的配列の一端においては、II型RT部位も内在性宿主細胞染色体に組み込まれ、I型RT部位の近くに隣接する。内在性宿主細胞染色体に2個のI型RT部位と1個のII型RT部位を挿入することによって、図1に示す構成が得られる。両方の組換え反応が一旦終了すると、I型RT部位は内在性宿主遺伝子標的配列に隣接するが、I型RT部位の一方は更にII型RT部位に隣接し、このI型RT部位はII型RT部位と内在性宿主遺伝子標的配列との間に配置されるようになる。図1に示すように、両方のI型RT部位を同じ方向に整列させ、その組換えがやがて一緒になるようにする必要がある。部位特異的リコンビナーゼを用いて特定の染色体位置を相同組換えの標的にできることが本技術分野で知られている(Jessenら、1997参照)。このような部位特異的リコンビナーゼを用いる場合、必要に応じて、該部位特異的リコンビナーゼを添加して組換えを開始させることができる。] 図1
[0011] 内在性宿主遺伝子標的配列を除去するため、宿主細胞内の2個のI型RT部位間で部位特異的組換えを行うことができる。理解を容易にするため、部位特異的組換えのメカニズムを図3に示す。これらの組換えイベントによって、内在性宿主遺伝子標的配列が除去され、残存I型RT部位は宿主細胞染色体内のII型RT部位の近くに配置されるようになる。この中間段階は、内在性遺伝子がノックアウトされた宿主細胞(ノックアウトES細胞)の作出を示す。] 図3
[0012] 本発明の方法の次の段階は異種置換遺伝子配列を提供することである。異種置換遺伝子配列は隣接I型RT部位と隣接II型RT部位との間に配置する。これらのRT部位は宿主細胞染色体内の対応するRT部位と同じ方向に整列させ、その組換えがやがて一緒になるようにする。異種置換遺伝子配列はベクター内に配置してもよく、直線核酸配列であってもよい。異種置換遺伝子配列はベクター内に配置することが好ましい。]
[0013] 異種置換遺伝子配列を宿主細胞染色体に挿入するため、宿主細胞染色体上に存在し、異種置換遺伝子配列に隣接した対応するRT部位間で部位特異的組換えを行う。組換えのメカニズムは図3に示す通りである。これらの組換えイベントによって、内在性宿主遺伝子標的配列が先に占めていた宿主細胞染色体内の位置において異種置換遺伝子配列が挿入され、一端では残存I型RT部位に隣接し、他端では残存II型RT部位に隣接する。] 図3
[0014] 本発明の方法は多くの利点を有する。先ず、部位特異的組換えを用いて異種置換遺伝子配列を宿主細胞染色体に挿入することにより、相同組換えに比べ効率を大きく改善させることができる。US2007/0061900に記載の方法では、相同組換えを用いて、直線化されたLTVEC内に含まれるヒト免疫グロブリン可変領域の一部を挿入する。大きいサイズの置換配列の場合、宿主細胞染色体と異種置換遺伝子配列との間で相同組換えを促進するには長いDNA相同アームが必要となり、それに応じて効率が悪くなる。これに対し、本発明の方法では部位特異的組換えを用いるが、この場合、組換えを行う際に長いDNA相同アームを必要としないため、効率が大きく改善される。また、部位特異的組換えを用いて異種置換遺伝子配列を挿入する場合、大きいサイズの相同アームを必要とせず、正しく標的化された細胞クローンをサザンブロット解析によって確認することができる。]
[0015] 本発明のように、部位特異的組換えのメカニズムを用いて異種DNA配列を挿入すれば、効率が大きく改善されるのは明らかである。本発明の方法によって、宿主細胞内における僅か数ラウンドのターゲティングで内在性宿主遺伝子標的配列を異種置換遺伝子配列で完全に置換することができる。]
[0016] 更に、内在性宿主遺伝子標的配列の除去によってノックアウト細胞が得られるが、該細胞は、本発明の方法においては中間体として作用する。これは、異種遺伝子配列の導入を成功させるという最終目的とは別に有効に利用することができ、除去された内在性宿主遺伝子標的配列の機能をその欠失の影響を見ることによって解析することができる。異種置換遺伝子配列の最終的な挿入によって、置換遺伝子配列の機能を内在性遺伝子配列や完全ノックアウトの機能と比較することができる。]
[0017] 本発明の更なる利点は、内在性遺伝子配列を除去後に宿主細胞染色体内でI型RT部位とII型RT部位が近くに配置されることに関係する。Wallaceが記載したように、RT部位が異なる要素上で離れている宿主染色体における正しいターゲティングの頻度は1×10-8未満である。本発明の方法によると、内在性宿主遺伝子標的配列の除去後に、残存I型RT配列とII型RT配列は近くに配置される。「近い」位置は、互いが100ヌクレオチド以内にあることが好ましいが、50ヌクレオチド以内にあることが好ましく、40、30、20、15、10又は5ヌクレオチド以内にあることがより好ましい。この配置によって異種置換遺伝子配列の挿入の効率が大きく高まり、本発明の方法によるターゲティング効率は1×10-6程にも高くなり得る。これは重要な利点となるが、それは、正しく標的化された胚性幹細胞を得ることは通常、内在性宿主遺伝子標的配列を異種置換遺伝子配列で置換した胚性幹細胞を作出する際の律速段階であるためである。]
[0018] また、Wallaceが用いるDNAは非常に長い(200kbのオーダー)ため、分子内転位や望ましくない相同組換えイベントが生じる機会が増加し、非機能的又は不正確なDNA構造が生成する機会が増加する。本発明の方法は、効率が大きく向上しており、当業者が異種配列の完全性や忠実度が維持されたクローンを同定するためにより多くのクローンで開始することができるため、Wallaceの方法から見ると有利である。]
[0019] 導入された異種置換遺伝子配列は、それ自身の調節配列の制御下で組込むことができる。或いは、挿入された異種置換遺伝子配列の上流に等価な宿主細胞調節配列が配置され、その場所で用いられるように遺伝的組換えイベントを設定することができる。異種置換遺伝子配列の転写を支配すると考えられる調節配列を組込むのではなく、宿主細胞調節配列を保持する方が望ましい場合もある。例えば、異種置換遺伝子配列に関連する調節配列によって、宿主細胞における異種置換遺伝子配列の発現を制御できない場合がある。これについてはCheungら(Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 316, 1328-1334 2006)が示しており、CYP3A4タンパク質のヒトプロモーターを有し、CYP3A4に関してヒト化したマウスの場合、該タンパク質が成体雄において発現しないことが分かっている。従って、用いる構築物からプロモーターエレメントの一部や他の因子が欠損しているに違いないことが推定される。これに対し、マウス調節配列を保持し、これをヒト配列の代わりに調節に用いることによって、導入遺伝子の忠実な調節が保持され、上述のような問題が回避されることが保証され得る。]
[0020] 従来の技法(即ち、宿主細胞染色体への異種置換遺伝子配列の組込みが多少ランダムである)に対する本発明の方法の一利点は、等価な宿主細胞遺伝子配列の部位での組込みによって遺伝子配置のゲノムコンテクストが確実に保持されることである。このような部位で組込むことによって、転写が生じるのに必要な転写因子や他のタンパク質に対して染色体DNAへのアクセスが可能であるという意味において、染色体構造が局所的に「オープン」になると思われる。これだけでなく、内在性宿主遺伝子配列に対しても同じ染色体コンテクストが保持され、染色体三次構造レベルでのDNA転写の調節がヒストン結合及び染色体の局所的フォールディング/アンフォールディングによって保持されるようになる。これによって、遺伝子転写の全体論的な調節が確実に保持され、その後、内在性宿主遺伝子配列に見られるのと同様の遺伝子調節の組織分布が、導入された異種置換遺伝子配列でも生じるようになる。遺伝子転写レベルでのこのような生理学的調節メカニズムの完全な保持は先行技術の技法と共通するものではない。]
図面の簡単な説明

[0021] 本発明の方法の概要。この方法は、異種置換遺伝子配列を宿主胚性幹細胞に導入して内在性宿主遺伝子標的配列と置換するメカニズムであって、内在性宿主遺伝子標的配列に隣接するように2個のI型RT部位を挿入する(その内の一方はII型RT配列に隣接する)ことと、I型RT部位間で部位特異的組換えを行って内在性宿主遺伝子標的配列を除去することと、I型RT部位とII型RT部位に隣接する異種置換遺伝子配列を含むベクターを提供することと、宿主細胞染色体上及びベクター上に存在する対応RT部位間で組換えを行って、宿主標的遺伝子が先に占めていた宿主染色体内の位置において異種遺伝子配列が導入されるようにすることとを含むメカニズムを提供する。
相同組換えのメカニズム。相同組換えは二本鎖染色体の切断後に生じる。5’−3’エクソヌクレアーゼ活性によって3’オーバーハングが産生し、鎖侵入が生じる。DNA合成では無傷の鎖を鋳型として用い、連結によって染色体切断が修復され、ホリデイジャンクションが生じる。その後の分岐点移動と回復によって組換え産物が産生する。
A)LoxP部位特異的組換え部位。B)部位特異的組換えのメカニズム。相補的塩基対形成によって2個のLoxP部位が整列し、Creリコンビナーゼによって2個の部位間の組換えが触媒され、内在性宿主遺伝子標的配列が除去される。
トランスジェニックマウスを作出するための方法。トランスジェニックマウスは、発育胚盤胞に一以上の変化した胚性幹細胞を挿入することによって作出する。その後、胚盤胞を偽妊娠マウスに移植し、発育させてキメラを作出する。
マウスCyp3aクラスターを欠失させるための戦略。(A)マウスCyp3aクラスター内の機能性遺伝子の染色体の構成及び方向の概略図(出典:Nelsonら、2004年)。偽遺伝子は示されていない。(B)Cyp3a57及びCyp3a59のエクソン/イントロン構造。エクソンは黒い棒で示し、ATGは両遺伝子の翻訳開始部位を示す。相同組換えのターゲティングアームの位置をそれぞれ、薄灰色線(Cyp3a57)及び濃灰色線(Cyp3a59)でハイライトする。(C)相同組換えによりCyp3a57(左)及びCyp3a59(右)のターゲティングに用いたベクター。LoxP部位、lox5171部位、frt部位及びf3部位をそれぞれ、白い三角、縞模様の三角、黒い三角、及び灰色の三角で示す。(D)Cyp3a57及びCyp3a59遺伝子座における同一対立遺伝子上での相同組換え後の二重標的化ES細胞内のCyp3aクラスターのゲノム構成。(E)loxP部位におけるCre介在組換え後のマウスCyp3aクラスターの欠失。Cyp3a57、Cyp3a16、Cyp3a41、Cyp3a44、Cyp3a11及びCyp3a25由来の全てのエクソンとイントロンは完全に欠失し、エクソン1〜4及びCyp3a59のプロモーターも欠失する。従って、Cre介在欠失後に残存する唯一の機能性Cyp3a遺伝子はCyp3a13であり、これは、>7メガベース(Mb)のゲノムDNAやCypと無関係の多数の機能性遺伝子によってクラスターの残りから離れている。マウスCyp3aクラスターの欠失の成功を実証するために用いたプライマーを黒い矢印で示す。 分かり易くするため、配列は一定の縮尺率では示していない。TK=チミジンキナーゼ発現カセット、Hygro=ハイグロマイシン発現カセット、ZsGreen=ZsGreen発現カセット、P=ネオマイシンの発現を促進するプロモーター、5’ΔNeo=ATG欠損ネオマイシン。
マウスCyp3aクラスターをヒト化するための戦略。(A)Cyp3aクラスターのCre介在欠失後の最初の構成は図5Eで既に示した通りである。(B)欠失したマウスCyp3aクラスターへのCre介在挿入に用いるヒトCYP3A4及びCYP3A7遺伝子を含む改変ヒトBAC。(C)ヒトBACのCre介在挿入後の正しく標的化されたES細胞におけるCyp3aクラスターのゲノム構成。(D)frt部位及びf3部位でのFlp介在組換え後のハイグロマイシン選択カセット及びネオマイシン選択カセットの欠失。 分かり易くするため、配列は一定の縮尺率では示していない。Hygro=ハイグロマイシン発現カセット、P=ネオマイシンの発現を促進するプロモーター、5’ΔNeo=ATG欠損ネオマイシン。
3種類のG418耐性クローンのPCR解析。(A)図6Cに示す、ヒトBACのCre介在挿入後の正しく標的化されたES細胞におけるCyp3a遺伝子クラスターのゲノム構成。PCR解析に用いたPCRプライマーを黒い矢印で示し、予想されるPCR断片を灰色のボックスで示す。(B)3種類のクローン全てにおいてヒトBACが正しく挿入されたことを示すPCR結果。
3種類のG418耐性クローンのサザン解析。(A)図6Cに示す、ヒトBACのCre介在挿入後の正しく標的化されたES細胞におけるCyp3a遺伝子クラスターのゲノム構成。サザンブロット解析に用いたサザンプローブを黒い線で示すと共に、予想される制限断片を示す。(B)全てのクローンにおいてヒトBACが正しく挿入されたことを示すと共に、クローン3では更なる挿入が生じたことを示すサザンブロット結果。
ヒト化CYP3A4マウス株における肝CYP3A4タンパク質。Cyp3aノックアウトマウスの肝臓にヒトCYP3A4が存在することを示すサザンブロット結果。
ヒト化CYP3A4マウス株における腸CYP3A4タンパク質。Cyp3aノックアウトマウスの腸にヒトCYP3A4が存在することを示すサザンブロット結果。
CYP3A4/3A7ヒト化マウスのDNA解析。最終構築物におけるCYP3A4cDNAによる配列アラインメントから、ヒト化マウス株(hCYP3A4/3A7_Cyp3aKO及びhCYP3A4_Cyp3aKO)からクローン化されたCYP3A4cDNAは全長転写物であり、配列内では変異が無かったことが分かった。hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOにおいてはCYP3A7転写物は検出されなかった。
ヒト胎児、小児及び成人におけるデヒドロエピアンドロステロン代謝。CYP3A7はヒト胎児肝臓で発現する主なCYP3Aアイソフォームであり、出生後の第1週に発達スイッチを経て、CYP3A7はCYP3A4遺伝子の転写活性化と共にほぼ消失する。同様の発達スイッチがマウス(Cyp3a16〜Cyp3a11)でも見られた。本発明者らの実験に用いたマウスは9週齢超であったため、CYP3A7の発現はCYP3A4へスイッチしたと思われる。
ヒト化CYP3A4マウス株における肝CYP3A4及びCyp3aタンパク質の発現。Cyp3aノックアウトマウスの肝臓にヒトCYP3A4が存在することを示すサザンブロット結果。
ヒト化CYP3A4マウス株における腸CYP3A4及びCyp3aタンパク質の発現。Cyp3aノックアウトマウスの腸にヒトCYP3A4が存在することを示すサザンブロット結果。
トリアゾラム酸化によって示されるように、CYP3A4はCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおいて触媒的に活性である。Cyp3aKOマウスと比較して、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおいては、CYP3A4の高い触媒活性に起因してTRI代謝が増加する。CYP3A4は肝臓でのTRI代謝において重要な役割を果たすが、TRIはマウスにおいても広範に代謝され得る。
トリアゾラム酸化によって示されるように、CYP3A4はCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおいて触媒的に活性である。A.CYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの肝臓におけるCYP3A4の触媒活性を示すトリアゾラム酸化結果。B.CYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの十二指腸におけるCYP3A4の触媒活性を示すトリアゾラム酸化結果。
DBF酸化によって示されるように、CYP3A4はCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおいて触媒的に活性である。A.CYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの肝臓におけるCYP3A4の触媒活性を示すDBF酸化結果。B.CYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの十二指腸におけるCYP3A4の触媒活性を示すDBF酸化結果。
BQ酸化によって示されるように、CYP3A4はCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおいて触媒的に活性である。A.CYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの肝臓におけるCYP3A4の触媒活性を示すBQ酸化結果。B.CYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの十二指腸におけるCYP3A4の触媒活性を示すBQ酸化結果。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの血漿の臨床化学解析。(A)トリグリセリド、(B)低密度リポタンパク質(LDL)、(C)高密度リポタンパク質(HDL)、(D)コレステロール(CHOL)。データは平均±S.D.で示す(C57BL/6Jマウス(n=3)、全てのPCN処理トランスジェニックマウス(n=2))。処理グループから得たデータを対応のないt検定(両側P値)で比較した。*:処理C57BL/6Jマウスに対して有意差有り(*:P<0.05、**:P<0.01)。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの血漿の臨床化学解析:(A)総ビリルビン(BIL−T)、(B)直接ビリルビン(BIL−D)、(C)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、(D)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)。データは平均±S.D.で示す(C57BL/6Jマウス(n=3)、全てのPCN処理トランスジェニックマウス(n=2))。処理グループから得たデータを対応のないt検定(両側P値)で比較した。*:処理C57BL/6Jマウスに対して有意差有り(*:P<0.05)。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの血漿の臨床化学解析:(A)アルカリホスファターゼ(ALP)、(B)アルブミン(ALB)。データは平均±S.D.で示す(C57BL/6Jマウス(n=3)、全てのPCN処理トランスジェニックマウス(n=2))。処理グループから得たデータを対応のないt検定(両側P値)で比較した。*:処理C57BL/6Jマウスに対して有意差有り(***:P<0.001)。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの(A)肝ミクロソーム及び(B)腸ミクロソームにおけるCYP3A4タンパク質の発現。(+):PCNで処理(100mg/kg/2日/IP)、(−):媒体(コーン油)で処理した対照マウス。各レーンは一匹のマウスから得たサンプルである。10μgの肝ミクロソームタンパク質又は20μgの腸ミクロソームタンパク質をロードした。ブロットはポリクローナルウサギ抗CYP3A4(ゲンテスト、カタログ番号:458234)にてインキュベートした。標準品:HLM:プールした男性ヒト肝ミクロソーム(10μg)(ゲンテスト、カタログ番号:452172)、3a11:マウスCyp3a11組換えタンパク質(0.1pmol)(ヘンダーソン博士、ダンディー大学、英国)、3A4:ヒトCYP3A4バキュロソーム(0.1pmol)(インビトロジェン、カタログ番号:P2377)。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの(A)肝ミクロソーム及び(B)腸ミクロソームにおけるCYP3A/Cyp3aタンパク質の発現。(+):PCNで処理(100mg/kg/2日/IP)、(−):媒体(コーン油)で処理した対照マウス。各レーンは一匹のマウスから得たサンプルである。10μgの肝ミクロソームタンパク質又は20μgの腸ミクロソームタンパク質をロードした。ブロットはポリクローナルウサギ抗ラットCYP3A2(ヘンダーソン博士、ダンディー大学、英国)にてインキュベートした。標準品:HLM:プールした男性ヒト肝ミクロソーム(10μg)(ゲンテスト、カタログ番号:452172)、3a11:マウスCyp3a11組換えタンパク質(0.1pmol)(ヘンダーソン博士、ダンディー大学、英国)、3A4:ヒトCYP3A4バキュロソーム(0.1pmol)(インビトロジェン、カタログ番号:P2377)。Cyp3a11の対照バンドは50kD未満の電気泳動移動度を示したが、これは、該タンパク質にヒスチジンのタグが付加したという事実に起因する。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの(A)肝ミクロソーム及び(B)腸ミクロソームによる7−BQ酸化。データはCXR承認Laboratory Method Sheet Fluor−0005に従って作成した。未処理トランスジェニック/ノックアウトマウスの棒(単一の測定値を示す)以外、データは平均±SD(C57BL/6Jのミクロソーム(n=3)、PCN処理トランスジェニック株のミクロソーム及びヒト肝ミクロソーム(HLM)(n=2))。処理hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス及びhCYP3A4_Cyp3aKOマウス由来サンプルの活性は、対応のないt検定(両側P値)によってCyp3aKO株由来サンプルと比較した。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの(A)肝ミクロソーム及び(B)腸ミクロソームによるDBF酸化。未処理トランスジェニック/ノックアウトマウス及びヒト肝ミクロソーム(HLM)の棒(単一の測定値を示す)以外、データは平均±SD(C57BL/6Jのミクロソーム(n=3)、PCN処理トランスジェニック株のミクロソーム(n=2))。処理hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス及びhCYP3A4_Cyp3aKOマウス由来サンプルの活性は、対応のないt検定(両側P値)によってCyp3aKO株由来サンプルと比較した。*:有意差有り(*:P<0.05、**:P<0.01、***:P<0.001)。
C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの(A)肝ミクロソーム及び(B)腸ミクロソームによるトリアゾラムのαヒドロキシル化。パートAにおいて、媒体処理マウス由来サンプルの活性は左側のY軸スケールを参照し、PCN処理マウスのミクロソームの活性は右側のY軸スケールを参照のこと。未処理トランスジェニック/ノックアウトマウスの棒(単一の測定値を示す)以外、データは平均±SD(C57BL/6Jのミクロソーム(n=3)、PCN処理トランスジェニック株のミクロソーム及びヒト肝ミクロソーム(HLM)(n=2))。処理hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス及びhCYP3A4_Cyp3aKOマウス由来サンプルの活性は、対応のないt検定(両側P値)によってCyp3aKO株由来サンプルと比較した。*:有意差有り(*:P<0.05、**:P<0.01)。
RT−PCR産物のアガロースゲル電気泳動。反応にはCYP3A4特異的プライマー(ライン1〜5)、CYP3A7特異的プライマー(ライン7〜9)及び全肝臓RNAを用いた。(1):C57BL/6J、(2〜3):hCYP3A4/3A7_Cyp3aKO、(4〜5):hCYP3A4_Cyp3aKO、(6):分子量マーカー(1kbラダー)、(7):C57BL/6J、(8〜9):hCYP3A4/3A7_Cyp3aKO。] 図5E 図6C
[0022] 好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、異種置換遺伝子配列を宿主細胞に導入して内在性宿主遺伝子標的配列と置換する方法であって、
a)一対の同一のI型部位特異的リコンビナーゼ標的(RT)部位を別々の相同組換え段階によって宿主染色体の同一対立遺伝子に組み込み、置換対象の内在性宿主遺伝子標的配列が各々の端で前記同一のI型RT部位に隣接するようにすることと、
ここにおいて、同一のI型RT部位の一方は該I型RT部位の近くに配置されるII型RT部位に隣接し、II型RT部位はI型RT部位とは違って異種特異的であって、I型RT部位とは相互作用できないようになっており、
b)内在性宿主遺伝子標的配列が除去されるように前記一対のI型部位特異的組換え部位間で組換えを行って、残存I型RT部位を染色体内の除去位置に残すことと、
c)異種置換遺伝子配列を宿主染色体に接触させて異種置換遺伝子配列が一端でI型RT部位に隣接すると共に、他端でII型RT部位に隣接するようにし、適切な条件下、異種置換遺伝子配列に隣接し、宿主染色体内に配置された対応するI型及びII型部位特異的組換え部位間で組換えを行うことによって異種置換遺伝子配列の宿主染色体への標的部位特異的リコンビナーゼ介在挿入を行い、宿主標的遺伝子が先に占めていた宿主染色体内の位置において異種遺伝子配列が導入されるようにすること
とを含む方法を提供する。]
[0023] 本発明によると、異種置換遺伝子配列を宿主細胞の染色体に挿入する際、内在性宿主遺伝子標的配列が自然に生じる染色体内の場所で行う。これは、遺伝子座のコンテクストが保持される、即ち、この部位からの転写の忠実度が野生型の系で生じる転写レベルにできるだけ近くなるという点で有利である。]
[0024] 方法
本発明の方法の第1の段階は、一対の同一のI型RT部位を宿主細胞染色体に組込むことである。RT部位を染色体に組込むための方法は当業者には公知であろうが、相同組換えプロセスを用いて行うことが好ましい。相同組換えは、核酸配列を宿主細胞染色体に挿入させるのに用いることのできる遺伝的メカニズムに関する。このメカニズムは、二本鎖の宿主細胞及び外因性核酸配列を整列させることによって開始する。宿主細胞配列内での二本鎖切断と5’−3’エクソヌクレアーゼ活性によって鎖侵入が促進され、その結果、短い相同領域によって相同的な宿主細胞及び外因性配列の塩基対形成が生じる。その後の宿主細胞配列の鎖伸長では外因性配列を鋳型として用い、回復によって、外因性配列が内部に配置された宿主細胞ゲノム配列が生成するが、外因性配列は無傷のまま残る。]
[0025] 相同組換えを行うための方法は本技術分野においては公知であり、外部から供給されたDNA分子と標的染色体との間で相同領域を用いてRT部位を導入する。好適な標的送達系は当業者には明らかであろうが、その例としては、注入又は標的ネイキッドDNAや、DNAを封入及び/又はDNAと複合体を形成した標的リポソーム、標的レトロウイルス系、プロタミン及びポリリジン凝縮DNA等の標的凝縮DNA、電気穿孔(エレクトロポレーション)の使用が挙げられる。また、他の送達方法を用いることもでき、例えば、核酸発現ベクターやポリカチオン凝縮DNA、リガンド連結DNAを用いる方法(Curiel (1992) Hum Gene Ther 3:147-154; Wu (1989) J Biol Chem 264:16985-16987参照)、及び遺伝子導入粒子銃の使用(米国特許第5,149,655号に記載)が挙げられる。また、国際特許公開WO90/11092に詳述のように、ネイキッドDNAを用いることもできる。このリストはほんの一例として挙げたに過ぎず、これらに限定されない。]
[0026] 組換え段階は、本技術分野でよく知られており、以下に更に説明する方法に従って宿主細胞内で行う。宿主細胞は幹細胞(例えば、iPS細胞や胚性幹細胞)が好ましい。胚性幹(ES)細胞は全能性細胞の培養細胞株であり、該細胞を初期胚に導入すると発育して生体の全組織に定着するようになる。ES細胞は本発明において好ましい宿主細胞である。]
[0027] 本発明の方法においては、上述のように、I型RT部位の各々は、別々の相同組換え段階によって宿主細胞染色体に組み込むことが好ましい。別々の相同組換え反応の各々は、宿主細胞染色体、及びI型RT部位と相同組換えを生じさせる宿主細胞染色体領域に相同な領域とを含む外因性DNAによって始める。相同領域は1〜6kbであることが好ましく、相同領域は1〜4kbであることがより好ましく、相同領域の一方の長さが1kbで、他方の長さが3kb又は4kbであることが最も好ましい。]
[0028] 本発明の方法においては、異種置換遺伝子配列によって置換される内在性宿主遺伝子標的配列が各々の端でI型RT部位に隣接するように2個のI型RT部位を宿主細胞染色体に組み込む。2個のI型RT部位を内在性宿主遺伝子標的配列に挿入する際、該部位を宿主遺伝子標的配列から5mb未満離れて配置するように行うことが好ましく、2個のI型RT部位を内在性宿主遺伝子標的配列に挿入する際、該部位を宿主遺伝子標的配列から3mb未満離れて配置するように行うことがより好ましく、2個のI型RT部位を内在性宿主遺伝子標的配列に挿入する際、該部位を宿主遺伝子標的配列から2mb未満離れて配置するように行うことが最も好ましい。また、本発明の方法においては、2個のI型RT部位を互いに同じ方向に配置し、やがてその間で組換えを生じさせる。]
[0029] 本発明の方法においては、宿主細胞染色体に組み込まれたI型RT部位の一方はII型RT部位に隣接し、該I型RT部位が内在性宿主遺伝子標的配列とII型RT部位との間に配置されるようになる。II型RT部位は、それに近いI型RT部位と同じ組換え段階によって宿主細胞染色体に組み込むことが好ましい。このため、相同組換え段階で用いる外因性DNA配列は、I型RT部位とII型RT部位が一緒に導入し得るようにこれらの部位のDNA配列を含んでいることが好ましい。]
[0030] 本発明の方法においては、I型RT部位とII型RT部位を互いに近くに配置する。本明細書において「近い」とは、RT部位が染色体上で互いにごく接近し、隣接して配置されることを意味する。「近い」位置は、互いが100ヌクレオチド以内にあることが好ましいが、50ヌクレオチド以内にあることが好ましく、40、30、20、15、10又は5ヌクレオチド以内にあることがより好ましい。以下に更に詳細に説明するように、I型RT部位はII型RT部位とは違って異種特異的であって、I型RT部位とは相互作用できないようになっている。]
[0031] 本発明の方法の次の段階は内在性宿主遺伝子標的配列の除去である。この除去は、内在性宿主遺伝子標的配列に隣接する2個のI型RT部位間での組換えによって行う。RT部位間で組換えを行うためには、I型RT部位を認識する部位特異的リコンビナーゼ(SSR)酵素形態のSSR活性にゲノムを曝露する必要がある。SSR酵素活性に曝露することによって、RT部位の配置で確認されるDNA再構成が生じ、その結果、直線DNA分子内で介在配列が除去又は切除される。「SSR」とは、特定のDNA遺伝子座におけるDNA再構成を仲介する組換え系の如何なるタンパク質成分をも意味し、例えば、インテグラーゼ又はレゾルバーゼ/インベルターゼクラスのSSR(Abremski, K.E. and Hoess, R.H. (1992) Protein Engineering 5, 87-91; Khanら、(1991) Nucleic acidsRes. 19, 851-860; Nunes-Dubyら、(1998) Nucleic Acids Res 26 391-406; Thorpe and Smith, (1998) P.N.A.S USA 95 5505-10)及びイントロンコード化エンドヌクレアーゼによって仲介される部位特異的組換え(Perrin ら、, (1993)EMBO J. 12, 2939-2947)が挙げられる。部位特異的組換えが進行するメカニズムを図3bに示す。] 図3b
[0032] 2個のI型RT部位間でのSSR介在組換え後、残存I型RT部位は、宿主細胞染色体内の内在性宿主遺伝子標的配列が先に占めていた位置に残り、内在性宿主遺伝子標的配列は除去される。内在性宿主遺伝子標的配列はこの段階では細胞内で遊離直線DNA分子として存在するが、細胞エクソヌクレアーゼによって急速に分解されるであろう。]
[0033] 本発明の方法の次の段階は異種置換遺伝子配列の提供であり、直線核酸分子として提供することも可能であるが、ある種のベクター(例えば、バクテリア人工染色体(BAC)や酵母人工染色体(YAC)等)内に含有させることが好ましい。好適なベクターの例は本技術分野において広く知られている。]
[0034] 異種置換遺伝子配列は一端でI型RT部位に隣接し、他端でII型RT部位に隣接するが、該I型RT部位は、宿主細胞染色体に挿入されたI型RT部位と同じ種類であり、該II型RT部位は、宿主細胞染色体に挿入されたII型RT部位と同じ種類である。重要なことには、I型RT部位はII型RT部位とは違って異種特異的であって、I型RT部位とは相互作用できないようになっている。異種置換遺伝子配列に隣接するI型RT部位は宿主細胞染色体上のI型RT部位と同じ方向に配置され、異種配列に他端で隣接するII型RT部位は宿主細胞染色体上のII型RT部位と同じ方向に配置されて、やがて対応するRT部位対間で効果的な組換えが行われるようになる。]
[0035] 異種置換遺伝子配列を含む核酸と宿主細胞染色体との間でSSR介在組換えを生じさせるためには、この配列を宿主細胞染色体にごく近くで接触させる必要がある。好適な標的送達系は当業者には明らかであろうが、その例としては上述のものが挙げられる。]
[0036] 適切な条件下、異種置換遺伝子配列を含む核酸内及び宿主細胞染色体内において対応するRT部位間で組換えを行う。これらの組換え段階は同時に行うことが好ましく、これによって、宿主細胞染色体内の内在性宿主遺伝子標的配列が先に占めていた位置への異種置換遺伝子配列の導入が促進される。宿主細胞染色体上でI型RT部位とII型RT部位を近くに配置することによって、先行技術で先に記載されている方法と比較して異種置換遺伝子配列挿入の効率が高まる。]
[0037] 選択可能マーカー
宿主染色体に組み込んだI型RT部位の各々は、一以上の選択可能マーカーと連結させる(好ましくは、連続させる)必要がある。これらの選択可能マーカーは、外因性DNAがうまく組み込まれた宿主細胞(例えば、胚性幹細胞)をモニターすることができるように機能する。本発明の更なる様相によると、各I型RT部位は一以上の選択可能マーカーと連続してもよい。各I型RT部位は2種の選択可能マーカーと連続することが好ましい。各I型RT部位は少なくとも1種の正の選択カセットと連続し、正の選択カセットによって、核酸配列をうまく組み込んだ細胞の検出を可能にすることが好ましい。正の選択カセットによって、核酸配列を含む細胞のみが成長培地で生存し得ることを確実にして選択を可能にすることがより好ましい。各I型RT部位は少なくとも1種の負の選択カセットと連続し、負の選択カセットによって、核酸配列がうまく除去された細胞の検出を可能にすることが好ましい。負の選択カセットによって、核酸配列を含まない細胞のみが成長培地で生存し得ることを確実にして選択を可能にすることがより好ましい。各I型RT部位は1種の正の選択カセット及び1種の負の選択カセットと連続することが最も好ましい。]
[0038] 一以上の選択可能マーカーは、内在性宿主遺伝子標的配列とI型RT部位との間にあるように配置し、やがて宿主遺伝子配列と共に除去されるようにすることが好ましい。]
[0039] 正の選択カセットは、成長宿主細胞が曝露され得る化学化合物(例えば、抗生物質)に対するある種の耐性をコードする遺伝子であることが好ましい。その例としては、細胞成長培地に添加される抗生物質に対する耐性を付与する選択可能マーカー(例えば、G418、ハイグロマイシン又はピューロマイシンに対する耐性を付与するネオマイシン耐性マーカー)の使用が挙げられる。更なる例としては、本発明の上述の様相における核酸配列に相補的であり、それに対してハイブリダイズする核酸配列を用いた検出が挙げられる。例えば、サザンブロット解析やノーザンブロット解析、PCRが挙げられる。]
[0040] 負の選択カセットは化学化合物に対する感受性を付与する遺伝子であることが好ましい。例えば、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子を用いることができ、これによってガンシクロビルに対する感受性が付与されるであろう。]
[0041] 本発明の更なる様相においては、選択可能マーカーは、チミジンキナーゼ発現カセット、ハイグロマイシン耐性遺伝子、及びプロモーターを持たないATG欠損ネオマイシンカセット(5’ΔNeo)(Seiblerら、2005, Nucl AcidsRes. 33(7) e67参照)から選択される。]
[0042] 本発明の更なる様相においては、I型RT部位の一方はチミジンキナーゼ発現カセット及び5’ΔNeoと連続し、他方のI型RT部位はチミジンキナーゼ発現カセット及びハイグロマイシン耐性遺伝子と連続する。]
[0043] 宿主細胞染色体内のI型RT部位の一方に連結するように配置された5’ΔNeo配列は、宿主染色体内のプロモーター及びATGの存在に起因して細胞の選択を促進することが好ましい。この概念の基本は、プロモーターを持たないATG欠損ネオマイシンカセットを組み込み用マーカーとして用いることである。このようなカセットをゲノムにランダムに組み込んだ場合、該カセットは不活性となり、G418耐性を付与しない。プロモーターとATGを含む既に用意された遺伝子座に正確に挿入することによってのみ活性化され得る。こうして、染色体内の正しい位置にうまく組み込むための厳密な選択プロセスが提供される。]
[0044] 一実施形態においては、染色体に欠損配列を挿入した後、ATGをloxP部位によってネオマイシンから分離する。こうして、相補発現ネオマイシン配列によって、loxP部位及びネオマイシンカセットの3’半分によってコードされるアミノ酸の融合タンパク質が形成される。]
[0045] 本発明の一様相においては、異種置換遺伝子配列はベクター上に有り、このベクターは一以上の選択可能マーカーを含むことが好ましい。ベクターは2種の選択可能マーカー(好ましくは、ネオマイシン発現カセット及びハイグロマイシン耐性遺伝子から選択される)を含むことが好ましい。ベクター上に含まれる一以上の選択可能マーカーは、I型RT部位と異種置換遺伝子配列との間、及び/又はII型RT部位と異種置換遺伝子配列との間に配置されることが好ましい。異種置換遺伝子配列のどちらか一方の端に少なくとも1種の選択可能マーカーが配置されることが好ましい。異種置換遺伝子配列の各々の端に1種の選択可能マーカーが配置されることがより好ましい。]
[0046] この選択システムは、実験者が構築物に導入した選択マーカー遺伝子によって完全に管理される点で有利である。従って、本発明の方法は、最初の選択圧を必要とせず、如何なる胚性幹細胞にも用いることができる。これは、HPRT欠損(hprt-)胚性幹細胞株においてのみ実施可能なWallaceらの方法とは異なる。]
[0047] 更なるRT部位
本発明の更なる様相においては、一対のI型RT部位及びII型RT部位に加えて一以上の更なるRT部位を含むように宿主染色体を改変する。図1に示すように、宿主染色体は2種の更なるRT部位を含むことが好ましい。宿主染色体は1個のIII型RT部位と1個のIV型RT部位を含むことがより好ましい。これらの更なるRT部位は、I型RT部位及びII型RT部位について上述したのと同様に相同組換えによって宿主細胞染色体に組み込む。更なるRT部位は、I型RT部位及びII型RT部位と同時に組み込むことが好ましい。] 図1
[0048] この更なる実施形態においては、宿主染色体に組み込んだII型RT部位はIII型RT部位に隣接し、II型RT部位がI型RT部位とIII型RT部位との間に配置されるようになっている。]
[0049] 更なる実施形態においては、宿主染色体内でII型RT部位の近くに隣接しないI型RT部位はIV型RT部位に隣接し、I型RT部位が内在性宿主遺伝子標的配列とIV型RT部位との間に配置されるようになっている。]
[0050] 本発明の他の様相においては、ベクターは、I型RT部位及びII型RT部位に加えて一以上の更なるRT部位を含む。ベクターは2種の更なるRT部位を含むことが好ましい。ベクターは1個のIII型RT部位と1個のIV型RT部位を含むことがより好ましい。]
[0051] 更なる実施形態においては、更なるRT部位は、I型RT部位又はII型RT部位に隣接するようにベクター内に配置される。ベクター内のIII型RT部位は、II型RT部位と異種置換遺伝子配列との間に配置されるようにすることが好ましい。III型RT部位は異種置換遺伝子配列と一以上の選択可能マーカーとの間に配置して、一以上の選択可能マーカーがII型RT部位とIII型RT部位との間に配置されるようにすることがより好ましい。]
[0052] ベクター内のIV型RT部位は、I型RT部位と異種置換遺伝子配列との間に配置されるようにすることが好ましい。IV型RT部位は異種置換遺伝子配列と一以上の選択可能マーカーとの間に配置して、一以上の選択可能マーカーがI型RT部位とIV型RT部位との間に配置されるようにすることがより好ましい。]
[0053] また、ベクター上に存在する更なるRT部位を宿主細胞染色体内の対応するRT部位と同じ方向に整列させて、やがてその組換えを一緒に生じさせるようにする。上述のように、SSR介在組換えによる宿主細胞染色体への異種置換遺伝子配列の挿入を、ベクター及び宿主細胞染色体上に配置された対応するI型RT部位及びII型RT部位において行うことによって、更なるRT部位が宿主細胞染色体に同時に挿入される。]
[0054] ベクター上及び宿主染色体内に配置された対応するI型RT部位とII型RT部位との間で組換えを行い、異種置換遺伝子配列を宿主染色体に挿入することによって、異種置換遺伝子配列の一端に存在する一以上の選択マーカーと2個のIII型RT部位間の残存I型RT部位の位置が定まると共に、異種置換遺伝子配列の他端に存在する一以上の選択マーカーと2個のIV型RT部位間の残存II型RT部位の位置が定まる。]
[0055] 次に、宿主染色体に組み込まれた、対応する更なるIII型RT部位とIV型RT部位との間で2段階の別々の組換えを行うことができる。この更なる2段階の組換えによって、選択カセットを含んでいた宿主細胞染色体からDNAの一部が除去される。]
[0056] これは、選択可能マーカーが宿主細胞染色体内に残る際に悪影響を及ぼす可能性をなくす点で有利である。このような悪影響の例としては、選択可能マーカーの近くにある遺伝子の発現の変化や、選択可能マーカーの抗生物質耐性への寄与が挙げられる。また、2段階の更なる組換えによって、染色体内のその間にある残存I型RT部位及びII型RT部位を除去することができる。]
[0057] こうして、2段階の更なる組換えによって、異種置換遺伝子配列及び2個の残存RT部位を除く全ての非外因性DNAの欠失が促進される。2個の残存RT部位は残存III型RT部位と残存VI型RT部位であることが好ましい。]
[0058] RT部位
RT部位間で組換えを行うためには、部位特異的リコンビナーゼ(SSR)酵素形態のSSR活性にゲノムを曝露する必要がある。SSR酵素活性に曝露することによって、RT部位の配置で確認されるDNA再構成が生じ、その結果、直線DNA分子内で介在配列が除去又は切除される。「SSR」とは、特定のDNA遺伝子座におけるDNA再構成を仲介する組換え系の如何なるタンパク質成分をも意味し、例えば、インテグラーゼ又はレゾルバーゼ/インベルターゼクラスのSSR(Abremski, K.E. and Hoess, R.H. (1992) Protein Engineering 5, 87-91; Khanら、(1991) Nucleic acidsRes. 19, 851-860; Nunes-Dubyら、(1998) Nucleic Acids Res 26 391-406; Thorpe and Smith, (1998) P.N.A.S USA 95 5505-10)及びイントロンコード化エンドヌクレアーゼによって仲介される部位特異的組換え(Perrinら、(1993)EMBO J. 12, 2939-2947)が挙げられる。]
[0059] 大きいDNA断片(200kb〜数メガベース)の欠失に適したCre/lox介在欠失を仲介するための方法は以下の論文に記載されている(Li ZW, Stark G, Gotz J, Rulicke T, Gschwind M, Huber G, Muller U, Weissmann C. Generation of mice with a 200-kb amyloid precursor protein gene deletion by Cre recombinase-mediated site-specific recombination in embryonic stem cells Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jun 11;93(12):6158-62. Erratum in: Proc Natl Acad Sci U S A 1996 Oct 15;93(21):12052; in Su H, Wang X, Bradley A. Nested chromosomal deletions induced with retroviral vectors in mice. Nat Genet. 2000 Jan;24(l):92-5); Call LM, Moore CS, Stetten G, Gearhart JD. A cre-lox recombination system for the targeted integration of circular yeast artificial chromosomes into embryonic stem cells. Hum Mol Genet. 2000 Jul 22;9(12):1745-51)。]
[0060] 本発明の部位特異的組換え段階がインビボ又はインビトロで実行可能であることは理解されよう。]
[0061] インビトロ組換えの場合、RT部位に対応するSSRを変化した宿主細胞に導入する必要がある。このような導入は、SSRタンパク質を細胞に直接導入するか、又はSSRをコードする外因性遺伝子(これはその後発現する)を導入することによって行うことができる。SSRをコードする遺伝子を送達するための好適な標的送達系は当業者には明らかであろうが、その例としては上述の系が挙げられる。]
[0062] 後述のように、トランスジェニック生物を作出する場合には、インビボ組換えが望ましいこともある。部位特異的組換えは、トランスジェニック生物内でSSRの活性を誘導することによって行うことができる。生体系で遺伝子型を変化させるために部位特異的組換えをうまく利用するには通常、組換えイベントを調節するための戦略が必要である。これは、得られる発現パターンが上述の組織特異的な要素が活性となる時間及び場所に制限されるように、リコンビナーゼmRNA又はタンパク質の発現を制御することによって行うことができる(Baubonis and Sauer (1993) Nucl AcidsRes. 21, 2025-2029; Sauer B, (1994) Curr Opin Biotechnol 5:521-7; Rajewskyら、(1996) J Clin Invest 98, 600-3; Metzger and Feil, (1999) Curr. Opinions Biotechnology 10, 470-476)。組織特異的なパターン(例えば、肝臓におけるアルブミン−Cre)で発現を制御することができる。]
[0063] 研究者らは、SSR酵素を発現させるために、直接トランスフェクションや組換えウイルスによる感染、SSRタンパク質をコードするDNAやmRNA又は該タンパク質自身の注入を用いてきた(Konsolakiら、(1992) New Biol. 4: 551-557)。このようなSSR酵素の発現ではなく活性を調節することによって、より正確に制御することができる。一戦略においては、SSR酵素をステロイド受容体のリガンド結合ドメイン(LBD)に融合させた融合タンパク質を用いてSSR−LBDタンパク質を得る(EP-B-0 707 599;Logie and Stewart (1995) P.N.A.S. USA 92: 5940-5944; Brocardら、(1997) P.N.A.S. USA 94: 14559-14563; Akagiら、(1997) Nucleic AcidsRes 25, 1766-73)参照)。この戦略は、SSR活性を活性化するステロイド受容体のリガンドをリガンドが受容体部分に結合している場合のみ用いることに依存している。該受容体のLBDは、同族リガンドの非存在下ではSSRの活性を抑制する。同族リガンドの送達によってSSRの抑制を軽減し、RT部位間での組換えを行うことができる。]
[0064] このように、誘導については、前記SSRの転写を誘導するか、SSRの翻訳を誘導するか、又はSSRから阻害剤を除去することによって行うことができる。或いは、SSRをトランスジェニック生物に人工的に導入することができる。本発明の方法の一要素は、トランスジェニック生物内で部位特異的組換えを行うことによって内在性宿主遺伝子標的配列の除去が可能であると共に、内在性宿主遺伝子標的配列に代わって異種置換遺伝子配列を含むトランスジェニック生物の作出が可能であることである。]
[0065] トランスジェニックマウスを欠失株マウスと交雑させることによって部位特異的組換えをインビボで実施し得ることが好ましい。本明細書において「欠失株」とは、その生殖系列で部位特異的リコンビナーゼを発現するマウスに関するが、これを、トランスジェニックマウスと交雑させてマウス標的遺伝子配列を除去することができる。このように、インビボ組換えによって着目遺伝子に対してヘテロ接合性の子孫が産生する。こうして、トランスジェニックマウスを欠失株マウスと交雑させることによって、後代が産生すると共に、ヒト置換遺伝子配列と部位特異的リコンビナーゼを含有するように変化したマウス染色体を含む細胞が産生し、その結果、マウス標的遺伝子が除去され、細胞の機能的ヒト化が生じる。従って、このようなトランスジェニックマウスは、特定の遺伝子又は遺伝子クラスターに関するヒト化に対してヘテロ接合性となる。]
[0066] ある実施形態においては、部位特異的リコンビナーゼがリコンビナーゼ株マウスのある組織でのみ発現することが望ましい場合がある。ある遺伝子又は遺伝子クラスターの欠失が致死的であるか又は亜致死性の表現型作用をもたらし得ることは、本技術分野で知られている。また、このような遺伝子をそのヒト等価物で置換しても致死を防止できない場合がある。このような状況下では、部位特異的リコンビナーゼをある組織(例えば、肝臓)でのみ発現させることによって、致死に関する如何なるこのような問題をも克服し得る。これは、特定の遺伝子がある組織において必須である場合、このように部位特異的リコンビナーゼを発現させることによってマウス遺伝子が該組織において存続し得るため、特に有利となる。]
[0067] 本発明のこの様相においては、SSRはアルブミン−Creであり得る。アルブミン−Creは、RT部位LoxPに作用するSSR Creの特定のバリアントである。アルブミン−Creは肝臓においてのみ発現するため、マウス標的配列を肝臓以外の全ての組織で存続させることができ、致死に関する潜在的な問題を克服する一方、機能的にヒト化された肝臓が得られる。]
[0068] 最終的には、上述の方法によって作出した2種のヘテロ接合体マウスを交雑させて、着目遺伝子のヒト対立遺伝子に対してホモ接合性のトランスジェニックマウスを作出することができる。2種のヘテロ接合体トランスジェニックマウスの交雑によって、ヒト化対立遺伝子に対してホモ接合性の後代の一部が産生するであろう。]
[0069] 本発明の更なる実施形態においては、以降に開示の方法によって、トランスジェニック非ヒト動物を上述の特徴を全て有するように新しく作出する。]
[0070] また、部位特異的組換えイベントを体細胞において行うことも可能であり、その後、該細胞をWO00/51424の方法におけるクローン化マウス又はそのバリアントのコロニーを形成するために核移植ドナーとして用いることができる。]
[0071] 本発明の他の実施形態においては、本発明に係るトランスジェニック動物は交雑によって作出する。例えば、不要な配列をRT部位間に未だに含むマウスをSSR酵素を発現するマウスと交雑させることができる。]
[0072] 本発明の更なる実施形態においては、以降に開示の方法によって、トランスジェニックマウスを上述の特徴を全て有するように新しく作出する。]
[0073] 本発明の好ましい実施形態においては、I型RT部位、II型RT部位、III型RT部位及びIV型RT部位はいずれも同じではなく、各型のRT部位は他の型のRT部位の各々に対して異種特異的であって、RT部位のいずれも型の異なる他のRT部位とは相互作用できないようになっている。]
[0074] 好ましいリコンビナーゼタンパク質は、FLPリコンビナーゼ、Creリコンビナーゼ、Dreリコンビナーゼ、ジゴサッカロマイセス・ルキシープラスミドpSRl由来のRリコンビナーゼ、クルイベロマイセス・ドロソフィラリウムプラスミドpKD1由来のリコンビナーゼ、クルイベロマイセス・ワルティープラスミドpKW1由来のリコンビナーゼ、バチルストランスポゾンTn4430由来のTrpI、λInt組換え系のいずれかの成分、phiC31、Gin組換え系のいずれかの成分、及びこれらのバリアントから成る群から選択される。このリストはほんの一例として挙げたに過ぎず、これらに限定されない。]
[0075] 部位特異的組換え部位は、loxP、lox5171、lox511、F3及びFRTから選択されることが好ましい。]
[0076] 本発明の一様相においては、I型RT部位はloxPである。本発明の他の様相においては、II型RT部位はlox5171である。本発明の他の様相においては、III型RT部位はFRTである。本発明の更なる様相においては、IV型RT部位はF3である。当業者であれば、これらのRT部位は互いに交換可能であり、lox1517がI型、loxPがII型等となり得ることは理解されよう。また、いずれのRT部位の如何なる他の異種特異的変異体も用いることができる。例えば、loxPの如何なる異種特異的変異体(例えば、lox511)も用いることができる。]
[0077] ベクター
異種置換遺伝子配列はベクター上の宿主細胞に導入することが好ましい。上述のように、ベクターは通常のクローニングベクター、バクテリア人工染色体又は酵母人工染色体であることが好ましい。ベクターはBACであることが好ましい。]
[0078] 上述のように、必要に応じてベクターは異種置換遺伝子配列を含むが、これは一以上の遺伝子又は遺伝子セグメントを含み得る。また、異種置換遺伝子配列は一以上の遺伝子又は遺伝子セグメントに関連する調節領域も含み得る。また、ベクターは、一以上の選択可能マーカーと異種置換遺伝子配列に隣接するI型RT部位及びII型RT部位も含む。]
[0079] 内在性宿主遺伝子標的配列
本発明の宿主細胞は、相同組換えが生じ得る如何なる原核細胞又は真核細胞(例えば、細菌や酵母、動物細胞、植物細胞)であってもよい。しかし、宿主細胞は真核細胞であることが好ましく、幹細胞(例えば、ES細胞やiPS細胞)であることがより好ましい(Takahashiら、Nat Protoc. 2007; 2(12): 3081-9; Yamanaka, Cell Prolif. 2008 Feb;41 Suppl 1: 51-6参照)。本発明の一様相においては、宿主胚性幹細胞は哺乳動物幹細胞(例えば、哺乳動物ES細胞)である。本発明の更なる様相においては、哺乳動物胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞である。]
[0080] 本発明は、当業者には明らかであろう多数の遺伝子の如何なる1種を用いても実施することができる。宿主細胞標的と異種置換との間で交換し得る遺伝子の種類に対しては技術的な制限はない。本明細書においては、本発明をP450遺伝子クラスターを用いて説明するが、ここではマウスCyp3A、Cyp2C又はCyp2Dクラスターをヒト等価クラスターで置換する。P450遺伝子はヒト化(特にヌルバックグラウンド上)に関する興味深い候補であるが、それは、このような系によって、薬物分子に対するヒト代謝応答を競合するマウス系からの干渉無しに評価することができるためである。遺伝子は非常に大きいことが多いが、通常、同様の機能を有するファミリーにおいて一緒にクラスターを形成している。よって、本発明の方法は、このようなヒト化系の研究に対して特に十分に役立つ。]
[0081] 従って、宿主細胞標的遺伝子の発現産物は、異種置換遺伝子と同様、同等、等価又は同一の機能を保持していることが好ましい。これらの遺伝子は機能的に等価、及び/又は構造的に相同であり得る。例えば、宿主細胞標的遺伝子と異種置換遺伝子は相同度(a degree of homology)を有し得る。このような相同性は、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超又は95%超であることが好ましい。]
[0082] 当業者には明らかであろうが、宿主細胞染色体から除去された内在性宿主遺伝子標的配列は、I型RT部位(これは組換えてその間に含まれるDNAセグメントを除去する)の位置によって定められる。I型RT部位の位置は、宿主細胞染色体とI型RT部位を含む外因性DNAセグメントとの間の相同領域の位置に依存する。従って、如何なる数の遺伝子又は遺伝子セグメントであっても、本発明の方法を用いて宿主細胞染色体から除去し得ることは当業者には明らかであろう。]
[0083] また、I型RT部位の位置に応じて、内在性宿主遺伝子標的配列に関連する調節領域は除去され得るか、又は宿主細胞染色体内に残存し得る。内在性宿主遺伝子標的配列に関連する調節領域が宿主細胞染色体内に残存する場合、該領域は異種置換遺伝子配列と作用的に連結する(operatively linked)ようになることがある。このアプローチの利点は、内在性遺伝子の発現パターンが見られ、遺伝子発現が未改変宿主細胞内と同様に制御されることである。これは、宿主細胞内で通常発現しない遺伝子にとっては重要な意味を持つ。]
[0084] 異種置換遺伝子配列
異種置換遺伝子配列は、cDNA、ゲノムDNA、又はこれら2種の混合物を含むことが好ましい。ゲノムDNAは、スプライシングの忠実度が保持されるため、多くの状況下で有利である。しかし、配列の残部がcDNAであり得るように、大半のスプライスイベントが生じるイントロンを保持することのみが必要とされ得る。これによって、特にゲノムDNAが大きなイントロンを含む場合には、クローニングプロセスを簡単にすることができるが、このような場合、スプライスアイソフォームがゲノムDNAのこの領域でコードされなければ、より大きなイントロンは含まれ得ない。]
[0085] 異種置換遺伝子配列がベクター内に存在するI型RT部位及びII型RT部位の位置によって定められることは理解されようが、これら2種のRT部位間の全核酸配列は、宿主細胞染色体内に存在する対応RT部位との組換えの際に宿主細胞染色体に挿入される。従って、異種置換遺伝子配列は、遺伝子セグメント、全遺伝子又は多数の遺伝子に対応し得る。]
[0086] 異種置換遺伝子配列は遺伝子又は遺伝子セグメントに関連する調節配列を含み得る。従って、このような調節配列は異種置換遺伝子配列の一部として宿主細胞染色体に挿入される。調節配列は、異種遺伝子又は遺伝子セグメントに通常関連する調節配列であり得るが、該遺伝子又は遺伝子セグメントは、該遺伝子又は遺伝子セグメントを通常制御する調節配列の制御下のままである。これは、異種置換遺伝子配列が通常発現するのと同様に宿主細胞内で発現することができるため、有利となり得る。しかし、上述のように、発現上の問題を生じることもあり得る。]
[0087] 他の実施形態においては、遺伝子又は遺伝子セグメントに関連する調節配列は、異種置換遺伝子配列内に含まれる遺伝子又は遺伝子セグメントとは通常関連しない異種配列であり得る。この実施形態においては、調節配列は組織特異的調節配列(例えば、アルブミンプロモーター、アポEプロモーター又はビリンプロモーターを含む調節配列が挙げられるが、これに限定されない)であり得る。]
[0088] 本発明の一様相においては、異種置換遺伝子配列は哺乳動物遺伝子配列である。]
[0089] 本発明の更なる様相においては、哺乳動物置換遺伝子配列はヒト置換遺伝子配列である。]
[0090] ノックアウト株の提供
本発明の方法においては、特定の内在性遺伝子又は遺伝子クラスターのノックアウトを含む細胞株を作出することができる。一実施形態においては、内在性遺伝子又は遺伝子クラスターはシトクロムP450ファミリーのメンバーである。その例としては、Cyp3a、Cyp2c及びCyp2dクラスターが挙げられる。]
[0091] ノックアウト細胞株は安定であることが好ましい。「安定」とは、ノックアウト細胞株が細胞培養において生存可能な形態で最低でも1週間は維持され得ることを意味する。他の実施形態においては、ノックアウト細胞株は、生存可能な形態で最低でも2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、6ヶ月間、1年間、2年間又はそれ以上維持され得る。別の見方をすれば、安定な細胞株とは、生存可能なままで少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも200回又はそれ以上継代され得る細胞株である。]
[0092] 一実施形態においては、ノックアウト細胞株の作出に用いる細胞株は哺乳動物細胞株である。他の実施形態においては、哺乳動物細胞株はマウス細胞株である。更なる実施形態においては、マウス細胞株はマウス幹細胞株である。更なる実施形態においては、マウス幹細胞株はマウスES細胞株である。]
[0093] 安定なノックアウト細胞株の作出は、上述の方法による異種置換遺伝子配列の挿入にこのような予備調製ノックアウト細胞株を用いることができるため有利である。この予備調製ノックアウト細胞株によって、異種置換遺伝子配列の挿入時にES細胞で行う段階を少なくすることができるため、形質転換の効率が上昇すると共に、正しく標的化されるクローンの頻度が増加する。]
[0094] ノックアウト細胞株からのヒト化細胞株の作出
上述のノックアウト細胞株は、上述の方法によって異種置換遺伝子配列又は遺伝子クラスターを挿入するための宿主細胞株として用いることができる。一実施形態においては、異種置換遺伝子配列は哺乳動物異種置換遺伝子配列又は遺伝子クラスターである。他の実施形態においては、哺乳動物異種置換遺伝子配列はヒト異種置換遺伝子配列又は遺伝子クラスターである。更なる実施形態においては、ヒト異種置換遺伝子配列はシトクロムP450ファミリーのメンバーをコードする。シトクロムP450ファミリーのメンバーは、CYP3A、CYP2C又はCYP2D遺伝子又は遺伝子クラスターであり得る。CYP3A、CYP2C及びCYP2D遺伝子の例としては、CYP3A4、CYP3A5、CYP2C9、CYP2C19又はCYP2D6が挙げられる。]
[0095] 好ましい実施形態においては、異種置換遺伝子配列を挿入するために宿主細胞株として用いるノックアウト細胞株は、異種置換遺伝子配列内に含まれる遺伝子又は遺伝子クラスターに対応する遺伝子又は遺伝子クラスターのノックアウトを含む。]
[0096] ノックアウト細胞株への挿入に用いる異種置換遺伝子配列は、上述の異種置換遺伝子配列と同じであり得る。一実施形態においては、異種置換遺伝子配列は、遺伝子又は遺伝子クラスターに関連する調節要素を含み得る。一実施形態においては、このような調節要素は、異種置換遺伝子配列内に含まれる遺伝子又は遺伝子クラスターに対して内在的である。他の実施形態においては、調節要素は組織特異的な調節要素であり得る。組織特異的な調節要素の例としては、アルブミン、アポE及びビリンプロモーターが挙げられる。]
[0097] トランスジェニック生物
本発明の他の様相においては、上述の本発明の実施形態のいずれか一の方法によって作出されたトランスジェニック生物が提供される。このような生物は、異種置換遺伝子配列を内在性宿主遺伝子標的配列が先に占めていた位置において含み、対応する内在性宿主遺伝子標的配列が欠失されている。]
[0098] 本発明の更なる様相においては、トランスジェニック生物はトランスジェニック哺乳動物であり、欠失された内在性宿主遺伝子標的配列は哺乳動物遺伝子標的配列である。]
[0099] 本発明の更なる様相においては、トランスジェニック哺乳動物はトランスジェニックマウスであり、欠失された内在性宿主遺伝子標的配列はマウス遺伝子標的配列である。]
[0100] 本発明の更なる様相においては、異種置換遺伝子配列は哺乳動物異種置換遺伝子配列であり、本発明の更なる様相においては、異種置換遺伝子配列はヒト置換遺伝子配列である。]
[0101] 本発明の更なる様相においては、変化した幹細胞(例えば、異種置換遺伝子配列を含む本発明のES細胞)を胚盤胞に挿入することができる。従来、胚盤胞は胚性幹細胞に対応した種の雌性哺乳動物から交配の約3日後に単離している。最大20個の変化した胚性幹細胞(好ましくは、約16個)をそのような胚盤胞に同時に挿入し得ることは理解されよう。変化した胚性幹細胞を胚盤胞に挿入することにより、好ましくは、妊娠哺乳動物の特性を反映するように誘導された偽妊娠哺乳動物に移植することによって、胚性幹細胞は発育初期胚に組込まれるようになる。この方法によると、変化した胚性幹細胞を含む胚盤胞は偽妊娠哺乳動物の子宮壁内に移植され、妊娠期間が終了するまで該哺乳動物内で発育し続ける。変化した胚性幹細胞は増殖し、分裂して発育トランスジェニック哺乳動物の全組織(生殖系列を含む)に定着するようになる。]
[0102] 本発明の方法の一様相においては、作出したトランスジェニック哺乳動物は、各体細胞組織内及び生殖系列内に変化した細胞と未変化の細胞を含むキメラとなり得る。図4に示すように、偽妊娠哺乳動物は偽妊娠マウスであり、変化した細胞はマウス胚性幹細胞であることが好ましい。] 図4
[0103] 本発明の方法の更なる様相においては、上述の方法によって作出したキメラトランスジェニック哺乳動物を上述の方法によって作出した他のキメラトランスジェニック哺乳動物と交雑させることができ、得られた後代を試験して、挿入された異種遺伝子置換配列に関してホモ接合性の哺乳動物を同定することができる。挿入された異種置換遺伝子配列に関してホモ接合性の哺乳動物を同定するのに用いることのできる方法は、当業者には明らかであろう。例として、ホモ接合体の同定は、哺乳動物の尾端を採取し、着目ゲノムの部分をPCR増幅し、着目遺伝子クラスターの配列を決定して行うことができるが、これに限定されない。或いは、異種遺伝子置換配列に特異的なプローブを用いてホモ接合体を同定することもできる。]
[0104] 哺乳動物ノックアウト細胞株から得た細胞株を用いた単一又は多重ヒト化哺乳動物株の作出
本発明の他の実施形態においては、上述のように宿主細胞が哺乳動物ノックアウト細胞株である、上述の方法のいずれかによって作出された単一又は多重ヒト化哺乳動物株が提供される。このような生物は、ノックアウト細胞株が作出される前に内在性宿主遺伝子標的配列が先に占めていた位置に異種置換遺伝子配列を含む。]
[0105] 一実施形態においては、ヒト化哺乳動物はマウスである。]
[0106] 本発明の更なる様相においては、ヒト化幹細胞(例えば、本発明によって作出したノックアウト細胞株から得た、異種置換遺伝子配列を含むES細胞)を胚盤胞に挿入することができる。従来、胚盤胞は雌性哺乳動物から交配の約3日後に単離している。最大20個の変化した胚性幹細胞(好ましくは、約16個)をそのような胚盤胞に同時に挿入し得ることは理解されよう。変化した胚性幹細胞を胚盤胞に挿入することにより、好ましくは、妊娠哺乳動物の特性を反映するように誘導された偽妊娠哺乳動物に移植することによって、胚性幹細胞は発育初期胚に組込まれるようになる。この方法によると、変化した胚性幹細胞を含む胚盤胞は偽妊娠哺乳動物の子宮壁内に移植され、妊娠期間が終了するまで該哺乳動物内で発育し続ける。変化した胚性幹細胞は増殖し、分裂して発育トランスジェニック哺乳動物の全組織(生殖系列を含む)に定着するようになる。]
[0107] 本発明の方法の一様相においては、作出したトランスジェニック哺乳動物は、各体細胞組織内及び生殖系列内に変化した細胞と未変化の細胞を含むキメラとなり得る。]
[0108] 本発明の一様相においては、キメラトランスジェニック哺乳動物は、シトクロムP450ファミリーに属する遺伝子又は遺伝子クラスターに関してヒト化することができる。他の様相においては、シトクロムP450ファミリーはCYP3A、CYP2C又はCYP2D遺伝子又は遺伝子クラスターであり得る。更なる様相においては、CYP3A、CYP2C又はCYP2D遺伝子はCYP3A4、CYP3A5、CYP2C9、CYP2C19又はCYP2D6であり得る。他の様相においては、キメラトランスジェニック哺乳動物は、組織特異的プロモーターの制御下でヒトCYP3A4、CYP3A5、CYP2C9、CYP2C19又はCYP2D6遺伝子クラスターを含み得る。更なる様相においては、組織特異的プロモーターはアルブミン、アポE又はビリンプロモーターであり得る。上で詳述したように、これは、ある組織においてその欠失が致死的であるか又は亜致死性の表現型作用をもたらし得る遺伝子又は遺伝子クラスターにとっては有利となり得る。]
[0109] 本発明の方法の更なる様相においては、上述の方法によって作出したキメラトランスジェニック哺乳動物を上述の方法によって作出した他のキメラトランスジェニック哺乳動物と交雑させることができ、得られた後代を試験して、挿入された異種遺伝子置換配列に関してホモ接合性の哺乳動物を同定することができる。挿入された異種置換遺伝子配列に関してホモ接合性の哺乳動物を同定するのに用いることのできる方法は、当業者には明らかであろう。例として、ホモ接合体の同定は、哺乳動物から組織サンプル(例えば、尾端)を採取し、着目ゲノムの部分をPCR増幅し、着目遺伝子クラスターの配列を決定して行うことができるが、これに限定されない。或いは、異種遺伝子置換配列に特異的なプローブを用いてホモ接合体を同定することもできる。]
[0110] 更なる実施形態においては、種々の遺伝子又は遺伝子クラスターに関してヒト化したキメラ又はヒト化哺乳動物同士を交雑させて多重ヒト化哺乳動物株を作出することができる。一実施形態においては、CYP3A4に関してヒト化したCyp3aノックアウト、CYP3A5に関してヒト化したCyp3aノックアウト、CYP2C9に関してヒト化したCyp2cノックアウト、CYP2C19に関してヒト化したCyp2cノックアウト又はCYP2D6に関してヒト化したCyp2dノックアウトの1種以上を交雑させることができる。他の実施形態においては、ヒト化哺乳動物の2種、3種、4種又は5種を交雑させることができる。更なる実施形態においては、ヒト遺伝子クラスターの1種以上は組織特異的プロモーターの制御下にあり得る。更なる実施形態においては、ヒト遺伝子クラスターの2種、3種、4種又は5種は組織特異的プロモーターの制御下にあり得る。更に他の実施形態においては、ヒト遺伝子クラスターの1種以上はアルブミン、アポE又はビリンプロモーターの制御下にあり得る。更なる実施形態においては、ヒト遺伝子クラスターの2種、3種、4種又は5種はアルブミン、アポE又はビリンプロモーターの制御下にあり得る。]
[0111] 本発明の更なる様相においては、種々の遺伝子又は遺伝子クラスターに関してヒト化したキメラ又はホモ接合ヒト化哺乳動物の1種以上を交雑させて二重、三重、四重又は五重ヒト化哺乳動物株を作出することができる。単一ヒト化哺乳動物株の作出について上述したように、二重、三重、四重又は五重ヒト化に関してホモ接合性の哺乳動物株を作出するには更なる交雑と試験が必要となり得る。]
[0112] 更なる実施形態においては、内在性Cyp3a及びCyp2c遺伝子クラスターがノックアウトされ、ヒトCYP3A4、CYP3A5、CYP2C9及びCYP2C19遺伝子が挿入された四重ヒト化哺乳動物株が作出される。他の実施形態においては、上述のヒト遺伝子の1種以上は組織特異的プロモーターの制御下にある。更なる実施形態においては、ヒト遺伝子の2種、3種又は4種は組織特異的プロモーターの制御下にあり得る。更に他の実施形態においては、ヒト遺伝子の1種以上はアルブミン、アポE又はビリンプロモーターの制御下にあり得る。更なる実施形態においては、ヒト遺伝子の2種、3種又は4種はアルブミン、アポE又はビリンプロモーターの制御下にあり得る。]
[0113] この哺乳動物ヒト化に対するアプローチは、予備調製したノックアウト哺乳動物ES細胞を用いた四重ヒト化哺乳動物株の作出が可能となるため、四重ヒト化哺乳動物株の作出に用いる先の方法と比較して必要とする労力が実質的に少なくなるので有利である。実際、本発明の方法を用いて四重ヒト化哺乳動物株を作出するのに必要な段階の数は、従来の方法を用いて二重ヒト化哺乳動物株を作出するのに必要な段階の数と同等である。この段階数の削減によってヒト化哺乳動物株の作出の効率が上昇する。]
[0114] また、このアプローチをヒトCyp遺伝子クラスターの種々のポリマーバリアントと共に用いて、ヒト個体群に存在するCyp遺伝子クラスターの対立遺伝子全てを網羅することができる。]
[0115] また、このアプローチを用いて、シトクロムP450遺伝子ファミリーの遺伝子とは異なる遺伝子又は遺伝子クラスターに関してヒト化した多重ヒト化哺乳動物株を作出することができる。このような遺伝子の例としては、PXRやCXRが挙げられる。]
[0116] 実施例1:Cyp3aクラスターノックアウト
Cyp3aクラスターターゲティングベクターの構築
ハイグロマイシン、チミジンキナーゼ(TK)及びZsGreen発現カセットとloxP、lox5171及びfrt部位を含む第1のベーシックターゲティングベクター(Cyp3a57)をpブルースクリプト(pBS)内に構築した。マウスCyp3a57遺伝子の翻訳開始部位のすぐ上流の5.5kbのゲノム配列とCyp3a57のイントロン2内に位置する3.3kbの断片(両方とも相同組換え用ターゲティングアームとして用いた)は、Zhangらが1998年に示したように(Zhang, Y., Buchholz, F., Muyrers, J.P., and Stewart, A.F. 1998. A new logic for DNA engineering using recombination in Escherichia coli. Nat Genet 20:123-128.)ETクローニングによって得た後、図5Cに示すようにベーシックターゲティングベクターにサブクローン化した。] 図5C
[0117] ATG欠損ネオマイシン(5’ΔNeo)と、TK及びZsGreen発現カセットと、loxP及びf3部位とを含む第2のベーシックターゲティングベクター(Cyp3a59)をpブルースクリプト(pBS)内に構築した。翻訳開始ATG及び対応するプロモーターはフレーム内で5’ΔNeoカセットからloxP部位によって分離しており、loxP部位によってコードされる更なるアミノ酸がネオマイシンのN末端に融合して機能性タンパク質を生じさせ、発現の際にG418耐性がもたらされるようにする。マウスCyp3a59遺伝子のエクソン4を含む4.3kbのゲノム配列とCyp3a59のエクソン5〜8を含む5.8kbの断片(両方とも相同組換え用ターゲティングアームとして用いた)はZhangらが1998年に示したようにETクローニングによって得た後、図5Cに示すようにベーシックターゲティングベクターにサブクローン化した。] 図5C
[0118] 標的化ES細胞の作出及び分子キャラクタリゼーション
ES細胞の培養と標的変異誘発は、Hoganらが1994年に先述したように(Hogan, B.L.M., Beddington, R.S.P., Costantini, F., and Lacy, E. 1994. Manipulating the mouse embryo: a laboratory manual. New York: Cold Spring Harbour Press.)行った。]
[0119] ターゲティングベクター(Cyp3a57)をNotIで直線化し、C57BL/6マウスES細胞株に電気穿孔した。標準的なサザンブロット解析でスクリーニングした360個のハイグロマイシン耐性を有する蛍光陰性ES細胞コロニーの内、1個の正しく標的化されたクローン(B−G12)を同定し、拡大させ、種々の好適な制限酵素と、5’及び3’外部プローブと、内部ハイグロマイシンプローブとを用いたサザンブロット解析によって更に解析した。このクローンは両方の相同アームで正しく標的化され、更なるランダムな組み込みがないことが確認された(データは示さず)。]
[0120] 第2のターゲティングベクター(Cyp3a59)をNotIで直線化し、上述の正しく標的化されたCyp3a57ESクローンB−G12に電気穿孔した。標準的なサザンブロット解析でスクリーニングした271個のG418耐性を有する蛍光陰性ES細胞コロニーの内、1個の正しく標的化されたクローン(A−B5)を同定し、拡大させ、上述のサザンブロット解析によって更に解析した。このクローンは両方の相同アームで正しく標的化され、更なるランダムな組み込みがないことが確認された(データは示さず)。]
[0121] 図5Dに示すように、これらのターゲティング反応によって、Cyp3a遺伝子クラスターは一端でCyp3a57ターゲティングベクター配列に隣接し、他端でyp3a59ターゲティングベクター配列に隣接した。] 図5D
[0122] 二重標的化ES細胞におけるCyp3aクラスターのCre介在インビトロ欠失
二重標的化ES細胞におけるCyp3aクラスターのCre介在欠失を行うため、クローンA−B5(上述参照)由来の1×107個のES細胞を、Seiblerらが2005年に先述したように(Seibler J, Kuter-Luks B, Kern H, Streu S, Plum L, Mauer J, Kuhn R, Bruning JC and Schwenk F (2005) Single copy shRNA configuration for ubiquitous gene knockdown in mice. Nucleic AcidsRes 33(7):e67.)Cre発現プラスミドpCAGGScrepAで電気穿孔し、10cmのディッシュ上に1×105個の細胞及び5×105個の細胞をそれぞれ蒔き、2μMのガンシクロビル(カルバイオケム、ドイツ)を用いて選択した。この選択後に約100種のクローンが生存したが、これは、クローンA−B5内の同一対立遺伝子上でのCyp3a57及びCyp3a59のターゲティングを示すと共に、ガンシクロビルに対する耐性を付与するTK発現カセットの欠損によって分かるようにマウスクラスターの欠失が成功したことを示す。耐性クローンを96ウェルプレートの個々のウェルに移し、拡大させ、プライマー5’−GACATTGACATCCACTTTGCC−3’及び5’−GGGAGGGAAACTTGGAGG−3’を用いたPCRによってCyp3a遺伝子クラスターの欠失に関して更に解析した。両方のプライマーを図5Eに黒い矢印で示すが、Cyp3aクラスターのCre介在欠失によってのみ該プライマーが染色体上で十分近くにもたらされ、PCRで検出される319bpの断片が生じる。PCRによって解析された8種のガンシクロビル耐性ES細胞クローンの内の7種が予想された319bpのバンドを示し、これらのクローンにおいてはCyp3aクラスターの欠失が成功したことが確認された。Cyp3aクラスター欠失マウス染色体の概略構造を図5Eに示す。] 図5E
[0123] 実施例2:Cyp3aクラスターヒト化
改変ヒトBACの構築
改変ヒトバクテリア人工染色体(BAC)は、2段階の別々のETクローニングによって作出したが、これによって、必要な選択カセットと部位特異的組換え部位がBAC内に導入された。]
[0124] ヒト化ES細胞の作出及び分子キャラクタリゼーション
ES細胞の培養と標的変異誘発は、実施例1に記載したように行った。改変ヒトBACと実施例1に記載のCre発現プラスミドpCAGGScrepAを、実施例1に記載の親クローンA−B5由来の1×107個のCre欠失ES細胞に電気穿孔した。次に、10cmのディッシュ上に1×105個及び5×105個の電気穿孔ES細胞をそれぞれ蒔き、G418を用いて選択した。この選択後に7種のクローンが生存したが、これは、loxP部位において組換えが成功したことを示す。ヒトBACにおけるネオマイシンカセットはプロモーターを持たず、5’末端において切断されているため、G418耐性はloxP部位による塩基対の正確な組み込みによってのみ得ることができる。7種のG418耐性クローンの内、3種を拡大させ、PCR及びサザンブロット解析による解析を更に行った。図7Bに示すように、3種のクローンは全てヒトBACの両端で正しく標的化されていることが確認され、また、図8Bに示すように、3種のクローンの内の1種においては更なる組み込みが見られた。] 図7B 図8B
[0125] 実施例3:hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスの解析
本実施例においては、Cypa3aノックアウトマウス株と本発明の方法によって作出したhCYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウス株との比較を行う。hCYP3A4 Cyp3aノックアウトマウス株に関するデータは「2段階のクラスター欠失及びヒト化」戦略によって作出するが、これは比較のみに用いる。この方法は本発明の一部を構成しない。]
[0126] hCYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの作出
マウスCyp3aをヒトCYP3A遺伝子でゲノム交換してES細胞クローンを作出するため、BACクローンRP11−757A13(ImaGenes GmbH、ロベルト−レッスル通10、13125、ドイツ、ベルリン、ImaGenesクローンID:RPCIB753A13757Q)をred/ET組換え工学(recombineering)によって改変し、BAC内の既存のlox部位が適切に配置されたloxP及びlox5171部位によって置換され、ハイグロマイシン及び5’欠損ネオマイシン選択カセットが導入されるようにした。これによって、上述のように、Cre介在組換えによる改変BACを調製済Cyp3a欠失ES細胞クローンの対応するlox部位において挿入すると共に、プロモーターとATGを欠失Cyp3a遺伝子座に残したまま欠損ネオマイシンカセットを補完することによって、正しく標的化されたクローンを高い厳密性で選択することができた。更に、異種特異的フリッパーゼリコンビナーゼ(Flp)認識部位であるfrtとf3をBACに導入して、続くFlp介在組換えによるインビボでのハイグロマイシン及びネオマイシン選択カセットの除去を可能とし、また、ポリAモチーフを用いて、欠失していない内在性マウスCyp3a57プロモーターから開始する如何なる潜在的な転写をも終了させた。]
[0127] 親クローンA−B5に由来するCyp3a欠失サブクローンを用い、Cre介在組換えによってヒトCYP3A4及びCYP3A7を有する改変BACを挿入した。この目的のため、1×107個の細胞を標準的な条件下、約30μgのスーパーコイルBAC DNAと12μgの上述(40)のCre発現プラスミドpCAGGScrepAによって電気穿孔し、G418を用いて選択した。この電気穿孔手続き後に7種のG418耐性ES細胞クローンを得た。これらのクローンの内の3種を拡大し、種々の好適な制限酵素、5’及び3’外部プローブ及び内部ネオマイシンプローブを用い、PCRとサザンブロットによって更に解析した。3種のクローンは全て、両方のlox部位で正しく組換えられており、更なるランダムな組み込みを有しないことが確認された(データは示さず)。また、hCYP3A4/3A7 Cyp3aノックアウトマウスの作出に用いたES細胞クローン内のCYP3A4エクソンの配列を決定し、コード領域が承認された参照配列(http://www.cypalleles.ki.se/cyp3a4.htm)と一致するのを確認した。]
[0128] 触媒活性アッセイ
一株当たり3匹の雄性ホモ接合体マウスを通して用いた。2匹のマウスには5−プレグネン−3β−オール−20−オン−16α−カルボニトリル(PCN)を投与し(100mg/kg/2日間投与/IP)、1匹のマウスには媒体(コーン油)を投与した。触媒活性はトリアゾラム酸化、DBF酸化及びBQ酸化を用いて評価した。野生型(WT)及びCyp3aKOマウスを対照として用いた(WT、プール(n=3)、Cyp3aKO(n=1〜2))。最終投与から24時間後にマウスを殺した。肝ミクロソーム及び十二指腸ミクロソームをCYP3A4発現及び触媒活性について解析した。この研究の結果を表1及び図15〜18に示す。] 図15 図16 図17 図18
[0129] CYP3A4ヒト化マウスの肝ミクロソーム及び腸ミクロソームによる7−ベンジルオキシキノリン(7−BQ)のインビトロ酸化からは、Cyp3aノックアウトマウス由来のミクロソームと比較して有意差は見られなかった。これはウェスタンブロッティングデータとは一致せず、ヒト化株の肝臓及び小腸の両方(特にPCN処理マウス由来のサンプル)におけるCYP3A4タンパク質の発現を示唆した。また、プールされたヒト肝ミクロソームによる7−BQ酸化の速度は、対照C57BL16Jマウスの肝ミクロソームによって触媒される反応速度に比べ顕著に低かった。従って、7−BQに加えて、他のCYP3A4特異的蛍光基質DBFについて検討した。]
[0130] ]
[0131] 低レベルの基礎CYP3A4mRNAが確認されたが、これはタンパク質に翻訳されなかった。この株においてPCN誘導CYP3A4タンパク質発現が確認されたが、これはヒトと同程度であった。CYP3A4は、Cyp3aKOマウスと比較して、hCYP3A4_Cyp3aKOマウスにおいて触媒的に活性である。これらの結果から、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス株で発現するCYP3A4タンパク質は機能的であることが分かる。CYP3A4タンパク質/mRNAは確認されたがCYP3A7は確認されなかったことから、CYP3Aの発育調節におけるこのモデルの新しい有用性が示唆される。CYP3A4の触媒活性は、Cyp3aKOマウスと比較して、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおいて高い。インビトロ代謝研究から、マウスのCyp3aタンパク質によって、ヒトと比較してマウス特異的代謝のレベルが遙かに高くなり、これは好ましくない毒物学的意味を有することが分かった。これらの結果から、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス株は機能的であることが分かる。]
[0132] 体重及び肝臓重量
6匹のC57BL/6Jマウス(ハーラン(英国)から入手)、3匹のhCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、3匹のhCYP3A4_Cyp3aKOマウス及び3匹のCyp3aKOマウス(タコニク・アルテミス(ドイツ)より供給)を用いて更なる研究を行った。用いたマウスは全て雄性であった。到着時には、マウスは底の硬いポリプロピレンケージ内のおがくず上に収容されていた。処理時には環境性を高める材料は用いなかった。]
[0133] 動物飼育室においては、げっ歯動物の収容及び管理のためにホームオフィスで必要な条件がもたらされるように環境を管理した。温度は19〜23℃の範囲内に維持し、相対湿度は40〜70%の範囲内に維持した。計画通りに1時間当り14〜15回換気を行った。12時間の点灯と12時間の消灯とを繰り返した。この研究においては、特別なケージ構成は用いなかった。試験施設に到着後最低5日間はマウスを環境に慣化させた。]
[0134] マウスには耳に穴をあけ、尾部にマーキングをして独自に番号を付け、表2に示すように各グループに割り当てた。実験カードを各ケージに付け、計画ライセンスコード、実施した処理、研究番号、性別及びケージ内のマウスの個々の番号を記載した。]
[0135] ]
[0136] 研究開始前に全てのマウスを観察し、身体的に正常であると共に正常な活性を示すことを保証した。正常な挙動を示すマウスのみを研究に用いた。個々のマウスにおける如何なる臨床的異常も研究日誌に記録した。通常の状態評価を研究日誌に記録した。]
[0137] 表3に記載の実験デザインに従い、マウスにはコーン油(媒体)又はPCN(100mg/kg)を毎日2日間、腹腔内(IP)注射によって投与した。投与溶液の調製はCXRバイオサイエンシーズにて投与日に必要量のPCNに媒体(コーン油)を添加して行った。PCNの濃度は供給化学物質の濃度とし、純度の補正は行わなかった。余分な投与溶液は約2〜8℃で保存し、今後行う予定の解析に備えた。投与溶液の量は10mL/kg体重とした。2回目の投与から約24時間後に、CO2濃度を上昇させてマウスを安楽死させた。死亡時に心穿刺によって血液を血漿調製用リチウム/ヘパリンコートチューブ内に採取した。]
[0138] ]
[0139] 各マウスの体重は研究開始時と終了直前に記録した。体重は電子的に又は手作業で記録し、その重量の記録は研究ファイルに保存した。]
[0140] 肝臓を計量するため、胆嚢を除去した後、肝臓を摘出して計量した。2個の肝臓サンプル(約5mm3)を直ちにクライオバイアル内で液体窒素にて急速冷凍した後、約−70℃で保存してRNA解析に備えた。残りの肝臓を計量し、直ちに用いて細胞成分分画を行い、ホモジネートとミクロソームを得た。]
[0141] 表4に示すように、PCN投与によってC57BL/6Jマウスの肝臓/身体重量比は有意に(P<0.001)増加した。対照マウス及び処理トランスジェニックマウスの肝臓/身体重量比については、各対照グループにトランスジェニックマウスが1匹しかいなかったため、統計的な比較ができなかった。Cyp3aKOグループにおいてのみ、この低下に関して統計的に有意であった(P<0.05)が、処理トランスジェニックマウスは全て処理野生型と比較して肝臓/身体重量比の低下を示した。]
[0142] ]
[0143] 血漿臨床化学
血漿サンプルは、遠心分離(2000〜3000rpm、10分間、8〜10℃)によって赤血球を除去して得た。上清(血漿)を氷上で保存した後、臨床化学解析を行った。ペレットは廃棄した。全てのマウスの血漿サンプルは、トリグリセリド、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アルブミン、コレステロール、ビリルビン(総ビリルビン及び直接ビリルビン)、高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質についてCOBAS Integra400+(ロシュ)を用いて解析したが、その結果を図19〜21に示す。PCN処理hCYP3A4_Cyp3aKOマウスの血漿サンプルは、処理C57BL/6Jマウスのサンプルと比較して、コレステロール、低密度リポタンパク質、高密度リポタンパク質、アラニントランスフェラーゼ及びアルカリホスファターゼのレベルにおいて統計的に有意な上昇を示した。この上昇の生物学的意義については、より大きいグループサイズを用いて調べる必要があろう。他の全てのサンプルの血漿臨床化学パラメータの値は、未処理C57BL/6Jマウスの公知の正常範囲内であった。未処理C57BL/6Jマウスの血漿臨床化学パラメータの範囲を表5に示す。] 図19 図20 図21
[0144] マウス1(対照C57BL/6J)及びマウス4(対照hCYP3A4_Cyp3aKO)の血漿はコレステロール解析を行うには不十分であった。]
[0145] マウス5(対照hCYP3A4_Cyp3aKO)、マウス8(PCN処理C57BL/6J)及びマウス14(PCN処理Cyp3aKO)以外の全てのマウスにおける直接ビリルビンは定量限界未満であった。]
[0146] ]
[0147] CYP3A4の肝ミクロソーム及び腸ミクロソームのウェスタンブロット解析
十二指腸(胃の底部から最初の10cm)を摘出し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ)を含む氷冷PBSで洗い流した。最初の2cmを1mLのトリゾール(シグマ)を含む2mLのクライオバイアルに入れ、直ちに急速冷凍した後、約−70℃で保存してTaqman(登録商標)解析に備えた。残りの十二指腸を1mLのクライオバイアルに入れ、直ちに急速冷凍した後、約−70°で保存した。]
[0148] 肝ミクロソームは、新鮮な肝臓から細胞成分画分を調製して得た。上述のように肝臓を処理してホモジネートとミクロソームを得た。肝臓サンプルのアリコートを約−70°で保存した後に解析を行った。]
[0149] 冷凍した小腸は、ポリトロンホモジナイザーを用い、プロテアーゼカクテル阻害剤(ロシュ)及びPMSF(mM)を含むSETにてホモジナイズした。上述のようにホモジネートを細胞成分分画に付した。ミクロソーム画分を約−70°で保存した後に解析を行った。]
[0150] C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの肝ミクロソームは、CYP3A4に特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングによって解析したが、その結果を図22に示す。媒体処理hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスの肝ミクロソーム及び腸ミクロソームのウェスタンブロット上にCYP3A4の明確なタンパク質バンドが見られた。対照hCYP3A4_Cyp3aKOマウスの肝ミクロソームにおいては、CYP3A4のタンパク質レベルは検出限界未満であった。しかし、このマウス株の腸ミクロソームのイムノブロット上には低強度のCYP3A4タンパク質バンドが見られた。PCNの投与によって、ヒト化マウスにおいては肝臓CYP3A4の強いアップレギュレーションがもたらされた。腸サンプルにおいては、このアップレギュレーションはあまり顕著ではなかった。C57BL/6Jマウス及びCyp3aKOマウスのミクロソームにおけるCYP3A4タンパク質のレベルは検出限界未満であった。] 図22
[0151] CYP3A及びCyp3aの肝ミクロソーム及び腸ミクロソームのウェスタンブロット解析
ヒトCYP3AとマウスCyp3aアイソフォームの両方に対して親和性を有する抗体を用いて、C57BL/6Jマウス、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス、hCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCyp3aKOマウスの肝ミクロソームのウェスタンブロットを解析したが、その結果を図23に示す。両方のヒト化トランスジェニック株由来のマウス肝臓で検出されたタンパク質発現のレベルは、野生型と比較して有意に低かった。ヒト化トランスジェニックマウスはCyp3aファミリーに対してヌルであるため、該マウスの肝臓で見られた低強度のバンドはCYP3A4の発現のみを示す。この差はPCN処理後にあまり顕著ではなく、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスのサンプルにおいては、hCYP3A4_Cyp3aKOマウスのサンプルと比較してCYP3A/Cyp3aタンパク質の発現が高かった。腸ミクロソームにおいては、野生型マウス及びhCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスの両方においてCYP3A/Cyp3aタンパク質のレベルは同等であった。hCYP3A4_Cyp3aKOマウスの腸サンプルにおいては、Cyp3aKOマウスのサンプルと同様にバンドの強度は非常に低かった。] 図23
[0152] 肝ミクロソーム及び腸ミクロソームによる7−ベンジルオキシキノリン(7−BQ)のインビトロ酸化
図24に示すように、Cyp3aKOマウスのミクロソームによる7−BQ酸化は野生型マウスと比較して顕著に抑制された。ヒト化株はCyp3aKO株と比較して多少の活性の回復を示したが、この活性化は低く、統計的に有意ではなかった。また、プールしたヒト肝臓も低い反応速度を示したが、これは、7−BQがヒトCYP3A4よりも、マウスCyp3aに対して良好な基質であることを示唆する。] 図24
[0153] 肝ミクロソーム及び腸ミクロソームによるインビトロDBF酸化
50mMのHEPESバッファー(pH7.4)(15mMのMgCl2、0.1mMのEDTA)にて37℃で約50秒間、DBF(2μM)を5μLの肝ミクロソーム又は25μLの腸ミクロソームと共にインキュベートした後、20μLのNADPH(42mg/mL)を添加して反応を開始した。総反応体積を1mLとした。F−4500蛍光分光光度計(日立)(励起:485nm、発光:538nm)を用いてフルオレセイン蛍光を記録した。NADPHの添加から約150秒後にフルオレセイン標準品(10μL、25μM)を反応キュベットに注入した。経時的な生成物蓄積の勾配はFL−Solution2.0(日立)を用いて計算した。]
[0154] 未処理ヒト化マウスの肝臓サンプル及び腸サンプルの両方においては、Cyp3aKOと比較してDBF酸化活性は殆ど増加しなかった。しかし、図25に示すように、PCN処理グループのサンプルにおいては有意差がより顕著であった。反応速度は、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOのミクロソームにおいてはhCYP3A4_Cyp3aKOマウスのミクロソームと比較して高かった。これはウェスタンブロッティングデータと関連付けられた。] 図25
[0155] 肝ミクロソーム及び腸ミクロソームによるCYP3A4の臨床的関連基質のインビトロ酸化
CYP3A4の臨床的関連基質としてトリアゾラムを選択した。トリアゾラムは現在、不眠症の治療に用いられている(米国病院薬剤師会のウェブサイト)。また、トリアゾラムは、ヒトCYP3A4に対してだけでなく、Cyp3aサブファミリー由来のマウスシトクロムP450に対しても選択的基質となることが分かった(Perloff ら、2000)。]
[0156] 50mMのHEPESバッファー(pH7.4)(15mMのMgCl2、0.1mMのEDTA)にて37℃で、トリアゾラム(50μM)をミクロソーム(2.5μLの肝ミクロソーム又は6μLの腸ミクロソーム)及びNADPH(1.3mM)と共にインキュベートした。総反応体積を200μLとした。15分後、反応混合物のアリコート(80μL)を採取し、等体積の氷冷アセトニトリルを添加して反応を停止させた。サンプルを約13,000gで10分間遠心分離し、上清のα−ヒドロキシトリアゾラム濃度をLC−MS/MSによって求めた(表6〜7)。20μLの上清をLC−MS/MSシステムに注入した。]
[0157] ]
[0158] ]
[0159] 図26に示すように、DBFと同様、対照ヒト化マウスのミクロソームにおけるトリアゾラムの酸化速度はCyp3aKO株と比較して僅かに高かった。誘導ヒト化マウスのミクロソームは有意に高い活性を示したが、hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス由来サンプルの活性はhCYP3A4_Cyp3aKO株由来サンプルに比較して高かった。] 図26
[0160] CYP3A4及びCYP3A7のRT−PCR及び配列決定
RT−PCR反応時にCYP3A4及びCYP3A7に特異的な次のオリゴヌクレオチドを用いた。
3A4_F_B gct gaa agg aag act cag agg Tm:59.8
3A4_R_B ggc aca gat ttc ttg aag agc Tm:57.9
3A7_F gac tca gag gag aga gat aag g Tm:60.3
3A7_R gca aac cag aag tcc tta ggg Tm:59.8]
[0161] RNeasyキット(QIAGEN、カタログ番号:74104)を用い、製造業者の指示に従って、ヒト化マウス(hCYP3A4/3A7_Cyp3aKO(マウス4)及びhCYP3A4_Cyp3aKO(マウス5))及び野生型C57BL/6Jマウス(マウス1)の肝臓組織から全RNAを調製し、RNeasyキット(QIAGEN)を用いて精製した。]
[0162] Superscript III One-StepRT-PCRPlatinum Taq HiFi Kit(インビトロジェン社、カタログ番号:12574−030)を用い、製造業者のプロトコルに従ってRT−PCRを行った。RT−PCR産物は、アガロースゲル上の電気泳動によって分離した。予測サイズのDNA断片をアガロースゲルから抽出した後、配列決定用TOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社、カタログ番号:K4575−01)を用いてベクターpCR4−TOPO内にクローン化した。
一段階RT−PCRの設定(CYP3A4及びCYP3A7の両方):
cDNA合成:
48℃、30分間
94℃、2分間
PCR増幅:
94℃、30秒間
54℃、30秒間
68℃、2分間
を40サイクル
最終伸長:
68℃、5分間]
[0163] 配列解析は、Lark Technologies社、A Genaissance社(エセックス州、テイクリー、ホープエンドCM22 6TA)によって行った。]
[0164] アラインメントは、VectorNTI 8ソフトウェアを用い、Contig express、Align-X及びT-COFFEE(http://www.ch.embnet.org/software/TCoffee.html)を利用して行った。]
[0165] ヒトCYP3A4転写物の特性化
媒体処理野生型マウス(マウス1)及びヒト化マウス(マウス4〜5)から単離した全肝臓RNAサンプルを、プライマー3A4_F_B及び3A4_R_Bを用いたRT−PCRによって解析した。図27に示すように、予測サイズ(〜1.6Kb)のDNA断片が見られた。マウス4及び5由来のDNA断片をアガロースゲルから抽出し、別々にpCR4/TOPOベクター内にクローン化した。] 図27
[0166] 2種の選択されたクローンを配列決定によって解析した。ターゲティングベクター(タコニク・アルテミス)に用いたCYP3A4cDNAによるこれらのクローンの配列アラインメントによって、クローン化されたCYP3A4は全長転写物に由来したことが分かった。]
[0167] ヒトCYP3A7転写物の特性化
ヒト化マウス4(hCYP3A4/3A7_Cyp3aKO)から単離した全肝臓RNAサンプルを、プライマー3A7_F及び3A7_Rを用いたRT−PCRによって解析した。図27に示すように、野生型マウス(マウス1)及びヒト化マウス(マウス4)のいずれにおいてもDNA産物は見られなかった。] 図27
[0168] CYP3A4、CYP3A7及びCyp3a11mRNA発現のTaqMan(登録商標)解析
CYP3A4及びCYP3A7のmRNAレベルの推定は、CYP3A4及びCYP3A7に特異的なプライマーを用いたQ−PCRによって行った。β−アクチンを参照遺伝子として用いた。肝臓サンプル及び腸サンプルのQ−PCR解析については表8にまとめる。]
[0169] ]
[0170] 各標的遺伝子に関して、dCt値が最小の反応を確認し、該dCt値を他の全てのdCt値から差し引いて、いわゆるddCt(dCt値が最小のサンプルのddCt(内在性参照)は0と等しくなる)を得た。最後に、表9に示すように、標的遺伝子の標準化相対量(RQ)を次式:RQ=(2^(−ddCt))*100を用いて算出した。]
[0171] ]
[0172] CYP3A4mRNAは、対照及び処理ヒト化マウスの肝臓及び小腸の両方において確実に検出された。CYP3A7mRNAレベルは、対照hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスの肝臓において検出限界未満であった。このデータは、CYP3A4及びCYP3A7のRT−PCR及び配列決定から得た結果と一致した。しかし、処理hCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスの肝臓のQ−PCR解析から、PCNの投与によってCYP3A7が誘導される可能性があることが分かった。CYP3A7mRNAは腸サンプルにおいては検出できなかった。トランスジェニックマウス間でCyp3a11mRNAのレベルに差は無かった(データは示さず)。Q−PCRデータを相対定量(RQ)として示すことによってPCNの誘導作用が確認された。]
[0173] CYP3A4タンパク質の構成的発現は、CYP3A4特異的抗体を用いて雄性hCYP3A4/3A7マウスの肝ミクロソームで検出された。しかし、この酵素の発現レベルは、CYP3A/Cyp3aタンパク質のイムノブロットの結果によると、マウスCyp3aの発現レベルよりも顕著に低かった。C57BL/6Jマウス株及びhCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウス株の腸ミクロソームは、同様のCYP3A/Cyp3aタンパク質の発現を示した。hCYP3A4_Cyp3aKOマウスにおける肝CYP3A4の構成的発現はウェスタンブロッティングの検出限界未満であり、この株由来の腸サンプルにおいてはCYP3A4のバンドの強度が非常に低かった。イムノブロットデータはCYP3A4特異的基質の酸化における活性とほぼ一致したが、各トランスジェニック株で利用し得るマウスは1匹のみであったため如何なる統計的な比較もできなかった。]
[0174] PCNを用いた処理によって、両方のヒト化株において肝CYP3A4及び腸CYP3A4が強く誘導された。処理C57BL/6Jマウス及びhCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスにおけるCYP3A/Cyp3aの発現は同程度であったが、hCYP3A4_Cyp3aKOマウスにおけるその発現は顕著に低かった。これは、DBF及びトリアゾラムを用いて測定したCYP3A4特異的酵素活性と一致した。しかし、7−BQを基質として用いた場合、PCNに呼応する活性の増加はCYP3A4_Cyp3aKOマウス及びCYP3A4/3A7_Cyp3aKOマウスの肝臓では見られなかった。この結果に対する可能な一説明は、特にプールしたヒト肝臓も低い反応速度を示したことを考慮すると、7−BQがヒトCYP3A4よりも、マウスCyp3aに対して良好な基質であるということである。]
[0175] CYP3A4mRNAは両方のヒト化株の肝臓及び小腸で検出された。逆転写とその後の配列決定によって、cDNAが全長CYP3A4転写物に由来したことが分かった。]
[0176] CYP3A7mRNAは対照マウス由来サンプルでは検出できなかった。CYP3A7はヒト胎児肝臓で発現する主なCYP3Aアイソフォームであり、出生後の第1週に発達スイッチを経て、CYP3A7はCYP3A4遺伝子の転写活性化と共にほぼ消失する(Stevensら、2003; Hines, 2008)。同様の発達スイッチがマウス(Cyp3a16〜Cyp3a11)でも見られた(Stevensら、2003)。本実験に用いたマウスは9〜15週齢であったため、CYP3A7の発現はCYP3A4の発現へスイッチしたと思われる。興味深いことには、CYP3A7mRNAの一部がPCN処理hCYP3A4/CYP3A7_Cyp3aKOマウスの肝臓で検出された。これは以前には見られなかった。実際、CYP3A4誘導剤を用いた処理によるCYP3A7のダウンレギュレーションが報告されている(Krusekopfら、2003; Haraら、2004)。]
[0177] 実施例4:Cyp2cクラスターノックアウト細胞株の作出
Cyp2cクラスターターゲティングベクターの構築
Cyp2cクラスターターゲティングベクターは、Cyp3aクラスターターゲティングベクターに関して実施例1に記載したように作出した。]
実施例

[0178] 二重標的化ES細胞におけるCyp2cクラスターのCre介在インビトロ欠失
二重標的化ES細胞におけるCyp2cクラスターのCre介在欠失は、Cre介在Cyp3aクラスター欠失に関して実施例1に記載したように行った。]
权利要求:

請求項1
異種置換遺伝子配列を宿主細胞に導入して内在性宿主遺伝子標的配列と置換する方法であって、a)一対の同一のI型部位特異的リコンビナーゼ標的(RT)部位を別々の相同組換え段階によって宿主染色体の同一対立遺伝子に組み込み、置換対象の内在性宿主遺伝子標的配列が各々の端で前記同一のI型RT部位に隣接するようにすることと、ここにおいて、同一のI型RT部位の一方は該I型RT部位の近くに配置されるII型RT部位に隣接し、II型RT部位はI型RT部位とは違って異種特異的であって、I型RT部位とは相互作用できないようになっており、b)内在性宿主遺伝子標的配列が除去されるように前記一対のI型部位特異的組換え部位間で組換えを行って、残存I型RT部位を染色体内の除去位置に残すことと、c)異種置換遺伝子配列を宿主染色体に接触させて異種置換遺伝子配列が一端でI型RT部位に隣接すると共に、他端でII型RT部位に隣接するようにし、適切な条件下、異種置換遺伝子配列に隣接し、宿主染色体内に配置された対応するI型及びII型部位特異的組換え部位間で組換えを行うことによって異種置換遺伝子配列の宿主染色体への標的部位特異的リコンビナーゼ介在挿入を行い、宿主標的遺伝子が先に占めていた宿主染色体内の位置において異種遺伝子配列が導入されるようにすることとを含む方法。
請求項2
段階a)において前記宿主染色体に組み込まれた前記I型RT部位の各々は一以上の選択可能マーカーと連続するように構築されている、請求項1に記載の方法。
請求項3
前記一以上の選択可能マーカーは前記マウス標的配列と前記I型RT部位との間にあるように配置される、請求項2に記載の方法。
請求項4
異種置換遺伝子配列は一以上の選択可能マーカーと連結している、請求項1に記載の方法。
請求項5
前記一以上の選択可能マーカーは、前記I型RT部位と前記異種置換遺伝子配列との間、及び/又は前記II型RT部位と前記異種置換遺伝子配列との間に配置される、請求項4に記載の方法。
請求項6
前記異種置換遺伝子配列のどちらか一方の端に少なくとも1種の選択可能マーカーが配置される、請求項4又は5に記載の方法。
請求項7
前記選択可能マーカーは、ネオマイシン発現カセット、ハイグロマイシン耐性遺伝子、及びプロモーターを持たないATG欠損ネオマイシンカセット(5’ΔNeo)から選択される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
請求項8
前記選択可能マーカーの少なくとも1種はATG欠損ネオマイシンカセット(5’ΔNeo)である、請求項7に記載の方法。
請求項9
前記I型RT部位間の組換え後に内在性宿主遺伝子標的配列プロモーターとATGが宿主染色体内に残り、ベクターの挿入時に前記5’ΔNeoが前記プロモーターとATGに作用的に連結するようになってネオマイシン耐性が発現するようになる、請求項8に記載の方法。
請求項10
宿主染色体に組み込んだ前記II型RT部位はIII型RT部位に隣接し、前記II型RT部位が前記I型RT部位と前記III型RT部位との間に配置されるようになると共に、宿主染色体内に存在してII型RT部位の近くに隣接しない前記I型RT部位はIV型RT部位に隣接し、I型RT部位が内在性宿主遺伝子標的配列とIV型RT部位との間に配置されるようになる、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項11
IV型RT部位は前記I型RT部位と前記異種置換遺伝子配列との間に配置され、III型RT部位は前記II型RT部位と前記異種置換遺伝子配列との間に配置されるように、前記ベクターは前記III型RT部位と前記IV型RT部位を含む、請求項9に記載の方法。
請求項12
ベクター上及び宿主染色体内に配置された対応するI型RT部位とII型RT部位との間で組換えを行い、宿主染色体への異種置換遺伝子配列のリコンビナーゼ介在挿入を行うことによって、前記異種置換遺伝子配列の一端に存在する前記一以上の選択マーカーと2個のIII型RT部位間の残存I型RT部位の位置が定まると共に、前記異種置換遺伝子配列の他端に存在する前記一以上の選択マーカーと2個のIV型RT部位間の残存II型RT部位の位置が定まる、請求項10又は請求項11に記載の方法。
請求項13
前記2個のIII型RT部位間及び前記2個のIV型RT部位間で組換えを行うことによって、前記異種置換遺伝子配列の各々の端で前記一以上の選択可能マーカーと前記残存I型RT部位又はII型RT部位が除去されて、残存III型RT部位と残存IV型RT部位が染色体内の除去位置に残る、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
請求項14
前記I型RT部位、前記II型RT部位、前記III型RT部位及び前記IV型RT部位はいずれも同じではなく、各型のRT部位は他の型のRT部位の各々に対して異種特異的であって、RT部位のいずれも型の異なる他のRT部位とは相互作用できないようになっている、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
請求項15
部位特異的組換え部位は、loxP、lox5171、F3及びFRTから選択される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項16
前記I型RT部位はloxPである、請求項15に記載の方法。
請求項17
前記II型RT部位はlox5171である、請求項15に記載の方法。
請求項18
前記III型RT部位はFRTである、請求項15に記載の方法。
請求項19
前記IV型RT部位はF3である、請求項15に記載の方法。
請求項20
前記異種置換遺伝子配列はベクター上に配置されている、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項21
前記ベクターはクローニングベクター、BAC及びYACから選択される、請求項20に記載の方法。
請求項22
前記組換えはインビボで行う、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項23
組換えは、発現プラスミドからの対応する部位特異的リコンビナーゼの発現によって行う、請求項22に記載の方法。
請求項24
宿主細胞は胚性幹細胞等の幹細胞である、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項25
前記胚性幹細胞は哺乳動物胚性幹細胞である、請求項24に記載の方法。
請求項26
前記哺乳動物胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞である、請求項25に記載の方法。
請求項27
前記胚性幹細胞は続いて胚盤胞に挿入される、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
請求項28
前記胚盤胞は偽妊娠哺乳動物に移植される、請求項27に記載の方法。
請求項29
前記偽妊娠哺乳動物は偽妊娠マウスである、請求項28に記載の方法。
請求項30
前記組換え段階はインビトロで行う、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項31
前記異種置換遺伝子配列は哺乳動物遺伝子配列である、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
請求項32
前記哺乳動物置換遺伝子配列はヒト置換遺伝子配列である、請求項31に記載の方法。
請求項33
先の請求項のいずれか1項に記載の方法によって着目遺伝子に関してヒト化されたトランスジェニック哺乳動物。
請求項34
トランスジェニックマウスである、請求項33に記載のトランスジェニック哺乳動物。
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